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2023.05.08

地震と共存する社会を持続させていくために

地震と共存する社会を持続させていくために
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日本は世界でも地震の多い国です。実際、近年は大きな地震が相次ぎました。一方で、地震による被害を最小限に抑える技術も世界トップクラスです。それは、昔から耐震や免震、制振の技術を積み上げてきたからです。本学もその一役を担ってきた歴史があり、さらに、歩みを続けています。

様々な形で活用されている振動を減衰する装置

松岡 太一 振動を減衰させる装置の研究というと、特に日本人は、地震対策を思い浮かべる人が多いと思います。

 もちろん、それも重要なテーマですが、振動や揺れとは、実は、私たちの身近にある日常的な現象です。私たちは、それを利用したり、抑える工夫をして、生活を便利にしています。

 例えば、健康器具や、ケータイなどのマナーモードは振動を上手く利用したものです。逆に、車や鉄道などは揺れを抑えることで乗り心地を良くしていますし、洗濯機なども振動を抑えることで使い心地を良くしたり、床や壁の損傷を抑えています。

 さらに、身近なところでは、靴の底に使われているゴムは歩くときの衝撃による振動を吸収することで、足や身体にかかる負担を和らげてくれています。自転車のタイヤは、空気が振動を和らげてくれています。こうした技術の積み重ねが地震対策にも活かされているのです。

 私の機械力学研究室では機械力学(Dynamics)のとくに振動を扱っており、その中でもダンパについて研究しています。

 ダンパは、英語ではDamperと表記し、辞書には湿らせる物とありますが、その意味が転じて、工学の分野では「振動を弱らせる、減衰させる装置」という意味で使います。

 ダンパの基本的な構造のひとつは、竹筒型の水鉄砲、要は、大きな注射器のようなものをイメージするとわかりやすいと思います。

 ピストンを押したり引いたりすると、筒の中の空気が筒の先の弁から出入りします。この弁を閉じると、ピストンを押しづらくなります。ちょうど、自転車のタイヤのような状態です。さらに、弁を調整し、空気の出入りをコントロールすれば、様々な押す力を吸収できるようになるわけです。

 実際のダンパは、筒の中に空気の他、オイルを入れたものや、筒も手で持てる大きさから、巨大なものまで多種多様です。乗り物や建物など、用途に応じて適材適所のダンパが開発されているのです。

 そこで、私たちの研究室では、新しい発想でダンパを進化させる研究に取り組んでいます。

英語版はこちら

※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。

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