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化石燃料ゼロ、CO2フリーの社会へ ―自然エネルギーによる電力エネルギーネットワークの実現を―

田村 滋 田村 滋 明治大学 総合数理学部 教授

地球温暖化という喫緊の課題

田村滋教授 すでに広く周知されている地球規模の課題の一つに、地球温暖化問題がある。温暖化の影響で、海面の上昇、猛烈な台風や洪水などの異常気象、生態系の変化などが生じており、早急な対策を講じる必要があることは言うまでもない。そもそも、地球温暖化はCO2排出量の増大が主な原因とされており、地球上のCO2は産業革命前と比較して約40%増加したと言われる。氷河内の気体成分を分析した研究者の報告によれば、現在の地球上のCO2の量は過去80万年で最高レベルという。地球温暖化対策のためには、CO2の削減が必要なことも広く知られている事実だろう。そのためにIPCC(気候変動に関する政府間パネル)をはじめ、各方面で多彩な取り組みが進められている。
 CO2削減に最も有効であるとされることの一つが、電力等のエネルギーを石油や石炭などの化石燃料に依存するのではなく、太陽光、風力などの自然(再生可能)エネルギーに代替していくことである。化石燃料を燃やすことが、CO2排出量増大の最大の要因だからだ。したがって、地球温暖化からこの地球を救うためには、「化石燃料ゼロ、CO2フリーの社会」を目指さねばならない。そのために自然エネルギーを普及拡大していく必要があるが、そこには大きな課題がある。

「グリーングリッド」という考え方

 自然エネルギーを増やしていく上で課題の一つになるのがコストの問題である。太陽光にせよ風力にせよ、化石燃料と比較すると発電コストはかなり高い。さらにコストを抑えることができたとしても、現状では適切に利活用できないおそれがある。基本的に電気エネルギーは貯蔵できないものだ。消費量の変動に合わせて発電が行われており、電力貯蔵設備から供給されているわけではない。消費は刻々と変化するため、火力発電機などの発電出力を調整することによりバランスを取っているのだ。しかし自然エネルギーでは出力調整の発電機がないため、従来のように制御ができない。詳細にいえば風力発電ではグレード(羽根)を動かすことで、出力減のみの制御は可能だ。太陽光は単に発電しているだけである。風力発電と太陽光発電は風速・日射量により発電量が変化するため、発電量が不安定であることも問題だ。その調整・制御ができないとなれば、自然エネルギーの普及拡大、「化石燃料ゼロ、CO2フリーの社会」の実現は遠のく。
 それらの課題解決の糸口となるのが、私が研究している「スマートグリッド」である。スマートとは「賢い」ことを意味することから、「スマートグリッド」とは賢い電力エネルギーネットワークを指す。すなわち電力エネルギーをネットワークとしてもっと賢く使おうという考え方だが、これを一歩進めたのが「グリーングリッド」。緑を表わすグリーンはCO2フリーを象徴する言葉だ。つまり「自然エネルギーによる電力エネルギーネットワーク」の実現である。そしてそのために、何が必要とされるかが問われてくる。

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