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自然エネルギーの開発に新たな視点の導入
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いま、クリーンで安全な様々な自然エネルギーの開発が進められています。大きな課題のひとつは、エネルギー供給力の向上です。そこで、設備のメガ化に走るのではなく、自然エネルギーの開発であればこそ、自然の摂理である効率化に学ぶ視点が必要ではないでしょうか。

自然エネルギーの変換効率をより高めるために

末松 J. 信彦 2011年の東日本大震災にともなう福島第一原子力発電所の事故は、私たちに自らの科学力の未熟さを突きつけるとともに、エネルギー問題の観点から持続可能な社会のあり方を根本から願う起点となったといえます。
 社会の指向が、安全性に不安のある原子力エネルギーや、資源の枯渇とCO2の排出問題がある化石燃料エネルギーから、自然エネルギーに向かったのは当然のことといえます。しかし、自然エネルギーの中心的存在である太陽光発電や風力発電にも大きな課題があります。社会のエネルギー需要に応えられる供給力がないことです。そこで、供給量を上げるために設備を増やす、巨大化するという方策に傾きました。まさに力押しです。もっと、エネルギー変換効率を高める技術を開発する方策があっても良いのではないでしょうか。そのためのヒントは、自然そのものにあるのではないかと考えています。
 いま、自然エネルギーの技術のひとつとして注目されはじめているのが、人工光合成です。ここでも電力生産力の向上が大きな課題のひとつであり、そのために、様々な光触媒等が開発され、いかにエネルギー変換効率を上げるかが競われています。もちろん、光触媒の開発は大切ですが、私はここに新たな視点が必要ではないかと考えています。効率化を構築するには、自然の摂理である光合成の本質を捉え、その仕組みから人工光合成を再構築することも重要であると考えるからです。そこには、メガ化に頼らないヒントがあるはずです。私の研究分野である「自己組織化」には、自然が備えている効率化の本質を解き明かす可能性があります。

※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。

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