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再生可能エネルギーを当たり前にするために必要なこと

浦野 昌一 浦野 昌一 明治大学 総合数理学部 准教授

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先頃、2050年にCO2排出ゼロ社会を目指すために、再生可能エネルギーの比率を現在の約15%から、50~60%に引き上げる目標が議論されています。そのためには、太陽光発電や風力発電の設備を増やすだけでよいわけではなく、電力系統を安定して守るために克服しなければならない課題があります。

FIT制度によって普及した再生可能エネルギー

長島 和茂 クリーンなエネルギーである再生可能エネルギーを普及させていくことは、世界はもちろん、日本社会にとっても非常に重要なことです。しかし、そのためには、克服しなければならない様々な課題があります。

 まずは、当然ですが、再生可能エネルギーの設備を増やすことです。そのための施策として、2012年に制定されたのが固定価格買取制度(FIT制度)です。

 これは、ご存じの方も多いと思いますが、再生可能エネルギーで発電した電気を、従来の電力会社が条件によって10年、20年という一定期間中、決められた価格で全量買い取る制度です。

 この制度が始まったことにより、太陽光発電などの事業者が全国にできましたし、一般住宅の屋根に太陽光発電の設備を設置する人もずいぶん増えました。その結果、再生可能エネルギーによる発電の比率は上がり、2019年度には全発電中、約15%に達しています。

 一方で、問題が生じています。電力会社の買取にかかった費用は消費者が電気使用量に応じて負担する賦課金制度になっていますが、それが2019年には2.4兆円という膨大な額に達しているのです。

 そこで、この負担を軽減することも見据えて2022年度から導入されるのが、電気の市場価格に補助額(プレミア)を上乗せした価格で買い取るFIP制度です。

 そもそも、電気が市場で売買されていることがあまり知られていないと思いますが、電力の自由化にともない、2003年に日本卸電力取引所(JEPX)が設立されました。ここで、発電事業者や電気の小売り事業者などが入札して電気の売買が行われているのです。

 例えば、電気の需要が高まる夏の昼間などは電気の価格は高くなりますし、電気の需要が下がる春秋や夜間は安くなるわけです。もちろん、市場価格を決める要因は需要だけではありませんが、需要と供給のバランスは電気の価格を決める大きな要因になっています。

 すると、基本的には、再生可能エネルギーの発電設備が増えて供給量が上がれば、市場価格は安くなっていきますから、電気料金が抑えられていくことになるわけです。

 FIP制度では、FIT制度での固定買取価格より十分に市場価格が安価な場合には、賦課金として固定買取価格と市場価格の差額を負担するのではなく、賦課金として補助額(プレミア)分だけを負担することになり、結果としてみなさんの賦課金の負担が抑えられていくことになるわけです。

 また、売電する側は価格がより高いときに売りたいと思いますが、それは電力需要の高いときです。そのときに売電量が増えれば、需要と供給のバランスを取ることにも繋がります。

 それは、電力系統の安定化にとって非常に重要なことであり、FIP制度には、そうした機能を果たすことも意図されていると思います。

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