2024.03.21
再生可能エネルギーを当たり前にするために必要なこと
浦野 昌一 明治大学 総合数理学部 准教授安定した電力系統を維持しながら再生可能エネルギーを増やす
最初に述べたように、クリーンなエネルギーである再生可能エネルギーを増やしていくことは、サステナブルな社会を築いていくためには必要不可欠です。
しかし、そのためには再生可能エネルギーによる発電量を増やすだけでなく、安定した電力系統をどう維持していくか、という課題もあるのです。
例えば、太陽光発電や風力発電は気象条件によって発電量が変わります。それは、社会の電力需要量と一致するわけではありません。どうやって、需要と供給を常に一致させたら良いのかは、大きな課題です。
その方策のひとつとして蓄電池の開発があります。つくった電気を溜めておき、需要に応じて送電すれば電力系統の安定に繋がります。
実は、タービンによって発電する火力や水力、原子力と違い、太陽電池によって発電する太陽光発電は出力が非常に変動するため、それを滑らかにするという意味でも蓄電池がすでに使われているのです。
近年は、大容量の蓄電池の開発も進められていますが、非常に高価なので、なかなか実用化されません。そのため、大容量蓄電池の安価化は重要な開発テーマになっています。
また、これまでに蓄電池的な機能がある揚水発電が、夜間の余剰電力などの運用のために導入されています。
実は、発電単価の安価な原発は出力を一定運転することが効率的なのですが、すると、電力需要が少なくなる夜間などでは電気が余ることがあります。
そこで、高低差のある場所に貯水池をつくり、余った電力でポンプを動かし、下の池の水を上の池に吸い上げます。そして、電力需要が高いときに、上の池の水を放水して水力発電するのです。つまり、必要に応じて電力をコントロールすることができるわけです。
こうした仕組みは、再生可能エネルギーに対しても活用が始まっています。
こうした工夫や技術開発、また、電力需要予測の精度を高めることなどによって、電力系統を安定に維持しながら、再生可能エネルギーによる発電を増やしていく取り組みが進められているのです。
現代では、私たちにとって電気は空気のように、あって当たり前のものになっています。それは先人たちの努力と技術進歩のおかげです。
これからも、使えて当たり前のエネルギーとして電気を供給し続けるとともに、クリーンでサステナブルな社会を構築していくことが、私たちの目指す目標です。
※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。