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2014.02.01

化石燃料ゼロ、CO2フリーの社会へ ―自然エネルギーによる電力エネルギーネットワークの実現を―

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試みられてきた電力貯蔵の取り組み

田村滋教授 改めて確認しよう。自然エネルギーは、火力発電のように消費に対応して発電機出力を調整・制御する機能がない。ではいかにして「自然エネルギーによる電力エネルギーネットワーク」を制御するか。それを可能とするのが電力の貯蔵である。先に、基本的に電力は貯蔵できないことを指摘したが、一部分の電力貯蔵は現在すでに行われている。その代表的なものが水力発電の一つである揚水式発電所だ。揚水式発電所は上池と下池を持ち、昼間は上池から下池に水を落として発電し、夜間は下池から水を上池に汲み上げ貯蔵する。発電だけを目的とする発電所というより、電力需要・供給のバランスを担う蓄電を目的とした、蓄電所というべきものだ。この貯蔵設備を増やすことができれば、自然エネルギーが抱える問題は解決されるだろう。しかし揚水式発電所に適した場所は限られる上、その多くはすでに設置済みだ。自然環境問題等から今後新設することは困難と言われている。
 電力貯蔵の試みは他にもある。電気が持つエネルギーを一時的に回転運動の物理的エネルギーに転換することで貯蔵する「フライホイール」。空気を圧縮して地下の空洞に貯蔵し、必要な時に圧縮空気を補助としてガスタービン発電に流し込む「圧縮空気貯蔵」などがあるが、いずれも限定された適用に留まっていたり普及していない。

「蓄電池」による電力貯蔵設備を

 電力貯蔵において、近年注目されているのが「蓄電池」である。蓄電池を電力エネルギーネットワークに接続し、消費が多いときは放電、少ないときは貯蔵し充電することで、自然エネルギーを調整・制御する。現在、蓄電池はリチウムイオン電池やNAS電池、ニッケル水素電池、鉛蓄電池などが実用化され、一層の研究開発も進んでいる。蓄電池自体の性能が向上しているだけでなく、全体的にコストも下がってきている。しかし、蓄電池を適用した電力エネルギーネットワークを実現するためには、課題も少なくない。コストが下がってきているとはいえ、現状の発電コストと比較すれば、かなり高い水準にある。性能面でも、エネルギー密度の向上や長寿命化、安全性の向上など検討すべき課題は多い。それぞれの蓄電池が持つ特性を組み合わせた電力貯蔵設備を、消費と発電の調整・制御に適用できないか。それが私の研究テーマでもある。研究で重要なことの一つはその経済性=コストである。エネルギー問題は経済と密接に関係しており、経済にとって低コストで得られるエネルギーが望ましいことは言うまでもない。電力貯蔵においてもコスト低減は大きなテーマと考えている。

※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。

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