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万葉集に由来する「令和」に込められた、時代にふさわしい願い

山﨑 健司 山﨑 健司 明治大学 文学部 教授

今年の5月1日から、元号が「令和」になりました。発表当初から、概ね好感度が高く、違和感なく定着しています。安倍首相は、令和には、人々が美しく心を寄せ合う中で、文化が生まれ育つ、という意味が込められていると発表しましたが、出典である万葉集の引用箇所からは、さらに深い意味がみてとれると言います。

意外だった、新元号の万葉集からの出典

山﨑 健司 今回の改元にあたっては、意外に思えたことが、二つありました。ひとつは、思いのほか明るい改元であったことです。改元は、私にとっては2回目の経験ですが、昭和から平成に変わるときは昭和の天皇の崩御があり、その流れの中で改元が行われました。

 今回は、平成の天皇が退位されての改元であったため、昭和から平成のときに比べて、明るい雰囲気の中で進んだという印象です。そのためか、元号によって時代を区切って語る、という気風が日本人全体にみられたという気がします。

 そもそも、元号は、権力者が時間を支配することと結びついてできたものです。しかし、今回の改元を多くの人々が好意的に受け入れ、改元前にあった元号不要論がいつの間にか聞こえなくなったこと、また、西暦との併用において、元号には、人々が歴史を考えるときのひとつの尺度という意味があり、日本人が自らの歴史や社会を語る際の目安として、日本文化に深く根を下ろしている、と言えることが明らかになったと思います。

 もうひとつ、本当に意外だったのは、新元号の出典が万葉集であったことです。そもそも、元号は中国に由来し、日本では、西暦645年の乙巳の変後に「大化」と号したことが最初です。このときの出典は中国の「書経」でした。

 その後は、珍しい白い鳥が献上されたことに由来する「白雉」(650年)であったり、赤い鳥が献上されたので「朱鳥」(686年)とすることなどもありましたが、基本的には、中国の儒教の聖典、経典である四書五経を中心に採択することが慣例となっていました。

 ところが今回は、国書から採択されるのではないかということが前もって言われていましたが、その場合は、漢文で書かれている日本書紀か、続日本紀あたりから採択されるのだろうと思っていました。

 万葉集から採用されることが考えにくかったのは、万葉集は和歌集ですが、漢字の訓と音を組み合わせて、日本語の音を表記する万葉仮名で記されたものだからです。例えば、「やまと」を「八間跡」と表記するような具合です。これでは、元号に引用するのは難しいだろうと考えていたのです。

 ところが、「令和」が採用されたのは、巻五にある「梅花歌三十二首」の序文で、これは漢文で書かれています。漢文なので採用はしやすいものの、まさかここから、という思いがしました。

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