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集中豪雨を防ぐためには、法整備が必要!?

柳 憲一郎 柳 憲一郎 明治大学 名誉教授(元法学部教授)

CO2の排出削減は、地球規模の課題になっています。日本も、国内の排出削減・吸収量の確保により、2030年度に、2013年度比26.0%削減の目標を立てていますが、これを実現するには、CO2を分離回収して貯留する技術(CCS)の早期導入が欠かせません。では、そのためにはどんな課題があるのでしょう。

順調に進んでいる、CO2を回収・貯留する実証試験

柳 憲一郎 今年の夏、日本は記録的な酷暑になったり、西日本では過去に例がないほどの豪雨になるなど、異常気象が相次ぎました。それは地球温暖化の影響といわれます。その地球温暖化を招いている原因の一つにCO2などの温暖化ガスがあげられます。2015年に開催された第21回気候変動枠組条約締約国会議(COP21)では、世界の平均気温の上昇を、産業革命前と比べて+2℃に抑えるという目標が立てられました。それにともなって日本では、国内のCO2の排出削減・吸収量の確保により、2030年度に2013年度比でCO2の26.0%削減の目標を立てています。この目標を実現するためには、まず、現在、発電供給量の32%を占める石炭火力はCO2の排出が大きいことからその割合を下げ、CO2の排出が小さい再生可能エネルギーに転換することが必要です。また、政府の新しいエネルギー基本計画にもあるように、水素社会の実現も必要なことだと思います。しかし、再生可能エネルギーであればCO2の排出がゼロかというと、実は、そうではありません。また、水素社会の実現のためには、解決しなければならない問題がたくさんあります。そのための研究や開発がなされているいま現在でも、CO2は排出され続けているのです。そこで、このCO2を大気中に放出するのではなく、分離回収・貯留する技術(CCS)を導入、普及させることが、現在の社会にとって喫緊の課題であるといえます。そのほか、ダイレクトに大気中のCO2を回収する技術開発も進められていますが、ここでは触れません。

 国内では、CCS技術の実用化を目指し、2012年度から、北海道の苫小牧で経産省による実証試験が開始されています。まず、CO2を回収するにはいくつかの方法がありますが、苫小牧の実証試験では、CO2を吸収溶液に溶解させる化学吸収法を用いています。貯留する方式としては、世界では、地中に圧入する地中貯留、海底に圧入する海底下貯留、海水に溶かす中層溶解がありますが、苫小牧で行っているのは海底下貯留です。海底下約1000mと、約3000mの2層に、回収したCO2を陸地から専用管で圧入しています。現在では、年間10万t以上のCO2の圧入に成功しています。いま、国内のCO2排出量は、年間約11.3億tといわれていますが、日本の帯水層全体のCO2の貯留のポテンシャル可能量は約1500億tと推定されており、苫小牧での実証試験は、日本のCCSの実用化にとって、大きな前進になると期待されています。

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