様々な観点から考える必要がある制度設計
さらに、CCSの導入、普及における制度的課題として、CCS先進国の包括的な法規制の比較研究から、取組むべき段階・時期ごとの制度的課題を明確化しています。例えば、普及段階(操業段階)では、貯留および閉鎖後管理段階で、監督官庁の設定、および、事業許認可制度、長期モニタリング、コスト負担をどうするか、保険・補償制度などの導入が必要であると考えられます。
また、CCS導入推進に効果が期待される政策手法として、京都議定書でも規定されていた、CO2排出取引制度(CO2排出枠を定め、排出枠が余った企業と、排出枠を超えた企業との間で取引(トレード)する)や、工場、事業所から排出されるCO2に一定基準を設け、それを規制する制度などが考えられます。
CCSの導入・普及フレームワークとしては、民間が事業主体になる場合の規制型と、公共が事業主体となる推進型があります。例えば、農用地土壌汚染防止法では、国民の安全性を第一とし、公共負担で対応しました。CCS事業においても、公共負担をメインにするべきだと考えています。例えば、苫小牧の実証実験では、国の事業ですが、圧入を終えた閉鎖後の管理体制について、まだ決定されていませんが、環境省か経済産業省かは別として、国の管理になると思います。私たちは、海防法などの現行法で対応する場合の改正点などを挙げていますが、新法で対応する場合にも超長期で管理することが前提となるため、管理責任者を国とするとしても、実施主体は国が許認可する公共(運営機関)に移転させ、異常時措置についても、これらの公共(運営機関)が責任をもって対応する体制が必要だと考えています。
このようにCCSの実施方法と事業主体を推進型で考えた場合、まず、CO2を分離・回収するのは温暖化ガスの排出事業者です。事業所や工場等にCCSの施設を付設することを義務化するかは現下の検討課題です。回収されたCO2を圧入・貯留施設まで輸送するのは、公共と、委託を受けた民間の共同で行ったり、圧入・貯留も、民間の方がノウハウをもっているので、民間を中心に公共がサポートする形が考えられます。その後のモニタリングと閉鎖も、公共と民間の共同で行い、長期管理に入ってからは、国が管理責任者となり、公共・民間が実施者となります。異常時は公共で対応し、民間が作業委託を受けます。全体の費用については、CO2の排出量に応じて、事業者から応分の負担金を徴収し、基金として積み立てる方法が有効です。汚染者負担原則の観点から、抵抗なく受け入れられる仕組みであると考えます。
※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。