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集中豪雨を防ぐためには、法整備が必要!?

柳 憲一郎 柳 憲一郎 明治大学 名誉教授(元法学部教授)

戦略的環境アセスメント(SEA)を取り入れ、地域住民の理解を得ることが重要

 しかし、今後、CCSを実用化するにあたっては、技術的な問題だけでなく、新たな制度設計が必要です。例えば、苫小牧での実証試験は、海洋の汚染防止を定めた国際条約であるロンドン条約で認められ、さらに国内の海洋汚染防止法(以下、海防法)を改正することで初めて可能となりました。CCSがいくら喫緊の課題であるといえ、それによって海洋汚染が起きてしまっては本末転倒です。つまり、複数の政策の視点を欠いては、本当の問題解決にはならないということです。そこで、社会にとって新しい技術であるCCSを導入、普及させるためには、新たな法政策の枠組みを構築することが必要であり、そのためには、適切なポリシーミックスを見出すこと、つまり、いくつかの政策を組合わせて同時期に実施することが、きわめて重要になります。そこで、複数の大学の研究チームが連携し、本学が総括を行う研究体制を組み、新たな制度設計を提案するための研究を行っています。

 まず、苫小牧の実証試験で明らかになった課題のひとつが、漁業権との問題です。CCSは新しい技術であり、漁業権者が、CCSの操業による環境への影響や、CO2が漏洩したときのリスクを危惧するのは当然です。苫小牧では、実施者側がCCSの社会的重要性や、リスクマネジメントを十分説明し、地元の漁業関係者が理解を示したことで、実施が可能になりました。しかし、すべての地域でそれが上手くいくとは限りません。日本では、1997年に環境影響評価法ができ、環境に影響を及ぼす恐れのある大規模な事業については、事業者自らが環境への影響を予測評価することが義務づけられていますが、それは事業段階において、環境影響評価だけを行います。しかし、CCSにおいては、計画段階で、環境面、社会面、経済面を配慮した戦略的環境アセスメント(SEA)を取り入れるべきだと考えます。つまり、社会的受容性や経済性的の評価を行った上で、CCSのサイト選定導入、操業、閉鎖計画、閉鎖後の長期管理、また、漏洩などの異常事態に対するリスクアセスメント及び措置、その財政面での補償制度、長期保証システムなどについて、地域住民に情報開示と説明を行い、十分な理解を得ていくことが必要だと考えます。

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