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悲愴をユーモアに変容する哲学を始めよう

明治大学 文学部長 教授 合田 正人

異質なリズムの排除が閉塞状況を生む

合田 正人 ところが、異なるリズムに触れたとき、私たちはそれを排除するような反応を示すことがあります。それは、異なるリズムによって自分のリズムが乱されたと感じるときです。それによって、怒りやヘイト(憎悪)の感情をもつこともあります。実は、共同体を形成するリズムが、知らないうちに私たちを縛っているのです。リズムはイデオロギー(意味)に先行します。人は意味よりもリズムに強く反応するのです。すると、自分のリズムを乱す異なるリズムに対する反感は、理屈ではなくなります。まず、リズムによって意味の内容が規定されていくのです。

 確かに、集団は、ある種のリズムを必ず生み出していきます。その集団における教育とは、その特定のリズムを教えていくことでもあります。生徒は、道徳や価値観、日常の時間の観念まで、特定のリズムとして習得するわけです。しかし、一方で教育とは、別のリズムがあることを学ぶことでもあります。それは、例えば、日本語に対して英語があるという意味ではなく、日本語と英語が出会うということです。もともと、いまの私たちのリズムはゼロから生まれたわけではありません。複数のリズムが出会い、干渉し融合し合う中で、あるひとつのリズムが生まれてくるのです。そのリズムの中で生きる私たちは、そのリズムが生まれるために出会った様々なリズムのことを忘れ、失っているように見えますが、私は、人の中には複数の異質なリズムがずっと存続し続けている可能性があると思っています。だから、様々な地域の土着的なリズムを融合して生まれたジャズに多くの人が共感するし、東京で暮らす人も沖縄の三線に心が和らぐのでしょう。つまり、1人という1個のものは、おそろしく複雑なプロセスの中で、非常に巨大な、極端な言い方をすると、宇宙全体のプロセスがそこに関与して、1人の人間に集約し、その形で100年くらいの間、生きていると考えることができるわけです。人は、とても複雑なコンプレックス(複合体)であり、それはとても大事なことです。人と人の間には、国籍とか話す言葉とは別の関係性があるということになるのです。だから、私たちを知らないうちに縛っているひとつの既存のリズムに囚われることが、先に進んで行けないという閉塞状況に陥っていくことになるのです。

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