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2018.03.14

悲愴をユーモアに変容する哲学を始めよう

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日本の端っこの沖縄は東アジアの中央にあって、異質なリズムを育む

 例えば、端っこというものを考えてみましょう。端っことは、中心や中央から離れていて、非主流と思われがちです。一般にはあまり良いイメージではないでしょう。日本の地理でいえば、沖縄などはまさに端っこで、天気予報図などでは、沖縄だけ枠で囲まれて別扱いされることがあります。ところが、沖縄の位置を正しく表わす図にして見ると、確かに日本の端っこですが、東南アジアや中国、日本の中央でもあることがわかります。つまり、様々な地域の端境に位置しているわけです。すると、日本の端っこである沖縄の方が、他の地域とネットワークしやすい位置であることがわかります。実際に、沖縄には、日本やアジアを結ぶネットワークのハブのように機能した歴史があります。その結果、沖縄は、日本の中央とは異なる文化を培ってきました。それが顕著に表れるのが、リズムです。

 沖縄の歌謡集「おもろそうし」の研究で知られ、沖縄学の祖といわれる伊波普猷(いはふゆう)氏は、沖縄の三線の間の取り方や、踊りなどの独特の展開やリズムの問題に行き着いています。さらに、このリズムとは音楽のリズムだけでなく、日常のすべてに表れるリズムでもあります。人間はリズム的な動物といわれますが、何時に起きて、何をして、どういう朝食を食べて、という自分自身も無意識に行っている生活の仕方もリズムであり、社会やコミュニティなど、ある集団によってつくられたリズムもあるし、自然の様々な変化によってつくられたリズムもあります。意図的に訓練されたリズムもあるし、知らないうちに培われ身についたリズムもあるのです。様々な要素が絡み合い、私たちの体はある特定のリズムで動いているわけです。東京で暮らす人が沖縄に行くと、時間の流れ方が違うと感じることが多いというのは、沖縄が、多地域との活発なネットワークにより様々なリズムの影響を受けながら、沖縄独自のリズムを形成したからといえるでしょう。端っこを些末なものとみなす既存の発想に対して、ちょっと視点を変えると、それは様々な地域の中央にあって豊かなネットワークを構築できるということに気がつきます。そうした環境の中で生まれた沖縄の三線の独特の間やリズムは、東京のあくせくとした日常の中で思い返すと、フッと息をつくような、ある種の軽さをもたらしてくれるのではないでしょうか。

※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。

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