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AIと共生できない人は生き残れない!?

明治大学 国際日本学部 教授 小笠原 泰

最近のAI(人工知能)の発展はすさまじく、近い将来、AIが人間の能力を超えることで、人類がいままで築いてきた世界とはまったく異なる世界になるという考え方、シンギュラリティが真剣に論議され、2045年問題ともいわれています。はたして、そのような世界が本当に訪れるのでしょうか。

深層学習、強化学習により人を凌駕し始めたAI

小笠原 泰 現在AI(人工知能)はものすごい速さで進歩しています。テクノロジーの進歩が、コンピュータ自身の学習を加速させているからです。例えば、10の情報がある人と、100の情報がある人では、100の情報がある人の方が、物事を幅広く、奥深く、且つ高い精度で考えることができるでしょう。ところが、コンピュータは10億の情報を瞬時に解析することができるようになっているのです。それを支えているのが、膨大に集積され続ける情報(ビッグデータ)と、それを保存するストレージ(外部記憶装置)と個々のコンピュータをつなぐ太いネットワーク、そして、その膨大な情報を解析するCPUの性能の加速的な向上です。情報量のみならず向上し続ける強力な解析能力も備えているわけですから最強です。この3つの進歩に支えられ、コンピュータの学習能力は、機械学習と深層学習の領域で、急速に高まっています。機械学習とはまさに機械が学習するのですが、「入力と出力の関係」を学習する初期の教師付き学習から、「データの構造」を学習する教師なし学習へと進み、現在は、試行錯誤を通じて「価値(報酬)を最大化するような行動」を学習する強化学習へと高度化してきています。そして、人間の脳神経構造を模したパターン認識を可能とする多層構造からなる深層学習の技術も急速に進歩しています。つまり、学習効率が飛躍的に向上してきているのです。この強化学習と深層学習の技術の飛躍的な進歩によって、目的にいたる最適な方法を見つけ出すという点においては、コンピュータは人間を凌駕します。データの多さとその解析能力ゆえに人間を超える知見を有し、精度も飛躍的に高まります。その結果、人が思いもつかない判断や予測を行うことができるようになってきています。それを身近に見る一例が、「AlphaGo」です。チェスや将棋では人を破ったAIも、囲碁では人に勝てるはずはないと思われていました。チェスや将棋に比べて盤のマス目が多く、コマをとるのではなく、領域を取る囲碁では打ち手はより複雑だからです。どの位かというと、チェスは10の120乗、コマの再利用が可能な将棋は10の220乗、そして囲碁は10の360乗と指数的に打ち手は多くなります。「AlphaGo」は、定石を学習する深層学習と勝つという報酬の最大化を目指す強化学習で、自身との対局を繰り返した結果、予想をはるかに上回る速さで強くなったわけです。チェスの世界チャンピオンであったガルリ・カスパロフが、IBMが開発したチェス専用のスーパーコンピュータであるDeep Blueに敗れたのは1997年、将棋の世界でAIソフトにトップレベルのプロ将棋棋士である佐藤慎一四段が敗れたのが2013年です。10の120乗のチェスから10の220乗の将棋にいたるまでに16年を費やしています。しかし、10の220乗の将棋から、10の360乗の囲碁に至るまでは3年足らずしかかかっていません。この技術進歩の加速化は、大方の予想をはるかに上回るものでした。加えて、「AlphaGo」は、トップレベルの棋士でも想像がつかない手を指すようになったのです。

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