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アフリカ独特のユルさが、アフリカらしい発展の鍵となる

明治大学 専門職大学院 ガバナンス研究科 教授 笹岡 雄一

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アフリカは、大陸全体で人口が増加しており、生産年齢人口も多いため、将来的には非常に有望な地域だと言われています。しかし、それはヨーロッパなどの発展の仕方とは異なるプロセスになるとも考えられます。アフリカには、アフリカ的な独自の発展を遂げる可能性があるのです。

植民地の境界線がそのまま国境に

笹岡 雄一 現在、アフリカ大陸には55の国と地域がありますが、19世紀にアフリカに進出したヨーロッパの列強が植民地の境界として引いたラインが、そのまま国境として残り、いまに至ったものです。

 ヨーロッパの国々が進出してくる以前のアフリカにも、政治的共同体(Political Community)はありましたが、それは村のような非常に小さい領域のもので、国と言えるほどの大きさではありませんでした。

 王国と言われるものがいくつかありましたが、それもその時代の東南アジアの国々と比べても、国と言えるほどの大きさではありませんでした。

 そこで、ヨーロッパの列強は、まず、小規模な政治的共同体を掻き集め、大きな領域にした上で、植民地化を進めたのです。そのため、まったく交流がなかったような共同体が同じ単位に集められたり、同じエスニック・グループが別々の単位に分割されるようなことも起きたのです。

 こうして引かれた植民地の領域を示す境界線が、第二次世界大戦後、アフリカの各国が独立しようとするとき、そのまま国境線となったのです。

 つまり、もとの政治的共同体に戻るのではなく、植民地化された領域ごとに国として独立し、しかも、1960年代の初めには、その国境線は動かさないという取り決めもなされます。

 実際、その後、エリトリアがエチオピアから分離独立したときと、南スーダンがスーダンから分離独立したときに国境線が変えられた2回だけが例外で、それ以外はまったく変えられていません。

 これは、とても不思議なことに思えないでしょうか。つまり、国の成り立ちが、世界の他の地域とまったく異なるのです。

 例えば、ヨーロッパでは、都市国家が勃興し、その後、各都市国家間などで戦争が起き、勝った負けたで、その領地が広がったり小さくなったりすることが繰り返され、その中で近代国家の概念が生まれ、現在の国や国際秩序が形成されていきました。

 アジアでも同じようなプロセスがありました。アジアも植民地化され、その後独立した歴史がありますが、そもそも、植民地化以前から、そこは国と言えるような、ないしは近似した政治的共同体だったのです。

 そうした国の成り立ちが、アフリカにはないのです。もちろん、かつてのアフリカの政治的共同体の間でも紛争や戦争の歴史はありました。しかし、紛争に勝ったからといって領地を増やすわけではありませんでした。

 例えば、水源の利用について、勝った側のルールに従うなど、いわば、共同体の住民に対して従属関係という一定の秩序をもたらすことが主な目的だったのです。そのため、国という規模の領地ができることはありませんでした。

 日本にも戦国時代があり、勝った負けたで領土が増えたり減ったりする歴史がありました。つまり、領土に対する価値観が、ヨーロッパやアジア、日本にもあるのですが、アフリカにはそうした価値観がほとんどなかったのです。

 だから、ヨーロッパの列強によって引かれた植民地としての境界線を、そのまま国境線にしても良いという認識ができたのであり、その国境に対する意識もヨーロッパやアジアとは異なるのです。

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