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外国人労働者受け入れ拡大の成功には教育の力が必要!!

佐藤 郡衛 佐藤 郡衛 明治大学 国際日本学部 特任教授

2018年12月、改正出入国管理法(入管法)が設立し、4月より施行されます。これにより、外国人労働者の受け入れが拡大されますが、受け入れ態勢について、いまだに明確になっていない課題が多く、問題になっています。その課題の根底に、外国人労働者とその家族の教育問題があります。

外国人労働者を日本を支える一員として認識することが重要

佐藤 郡衛 まず、今回の入管法改正の前提には、日本の人口減少問題があります。いわゆる少子高齢化ですが、特に15歳以上65歳未満の生産年齢人口が急激に減少します。

 安倍首相は、女性や65歳以上の高齢者の就労を促し、一億総活躍社会の実現を目指すと言っていますが、現実的には、外国人労働者に頼らざるを得ない状況になっているのです。すでに、コンビニの店員に外国人が多いことは、多くの人が目にしていると思いますが、農業や漁業、工場で働く労働者も外国人依存率が極めて高くなっているのです。

 こうした状況では、外国人労働者の受け入れ拡大を進めざるを得ないのが現実です。

 しかし、ここで問題なのは、受け入れる側の、私たち日本人の認識です。安倍首相は一貫して、移民政策をとる考えはない、と主張していますが、日本で在留資格を得て働く外国人労働者は、現実的には移民です。

 例えば、入管法の大改正はこれが初めてではなく、バブル期の人手不足に対応するために、1990年に日系人を対象とした外国人労働者の受け入れ拡大施策を行っています。

 その結果、2018年には、日本に暮らす外国人労働者とその家族は263万人に達しています。国際機関のOECD(経済協力開発機構)は、この263万人を日本国内の移民として数えています。

 ところが、政府は一貫して移民政策をとる考えはないという姿勢です。つまり、外国人労働者を、こちらの忙しいときだけ来て仕事を手伝ってもらう出稼ぎ労働者のように捉えているということです。

 しかし、バブルが弾けたり、リーマンショックで雇い止めにあっても、帰国せず、日本国内で働き続けようとした外国人労働者は多いのです。政府の考えているように、こちらの都合にあわせて来てくれ、帰ってくれるようなことは起こりません。在留資格を与えれば、外国人であっても日本社会の市民として遇することが必要なのです。

 つまり、日本社会で暮らし、働いてもらう以上、外国人労働者には、日本人と同じように医療や福祉、そして教育を受ける権利がありますし、受けてもらわなければなりません。

 外国人労働者受け入れ拡大にともなう態勢には問題が山積みですが、まず、私たち日本人自身が、彼らを、日本を支える一員として認識することが問題を解決していく第一歩だと考えます。

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