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トランプ氏の勝利によって高まるhateの潮流にストップ!を

海野 素央 海野 素央 明治大学 政治経済学部 教授

アメリカの次期大統領はトランプ氏に決りましたが、選挙戦の最中はクリントン氏の有利が伝えられていました。なぜ、不利とみなされていたトランプ氏が勝ったのか、その勝因を分析するとともに、そこから生まれた潮流がどのようなものなのか、考えてみる必要があります。

マネジメントの差が出たオクトーバーサプライズ

海野 素央 私は、アメリカ大統領選挙の研究の一環としてクリントン陣営の運動員となり、11州で3300軒以上の戸別訪問を行いました。その体験からいうと、選挙結果はどちらに転ぶかわからないというのが実感でした。その理由のひとつは、戸別訪問をやっているとよくわかるのですが、最後の最後まで、無党派の中でジレンマを抱えた人たちがいたことです。私は、その人たちを無党派ジレンマ層と呼んでいます。彼らは「トランプは大統領になる資格がない」、「ヒラリーはメール問題で嘘をついている」と言い、どちらに投票するか決めかねていたのです。テレビ局の調査によると、こうした無党派ジレンマ層は有権者の3割ほどもいました。彼らの選択に大きな影響を及ぼしたのが、オクトーバーサプライズです。

 投開票日の約1ヵ月前に起こる、選挙結果に大きな影響を及ぼす驚くべき出来事をオクトーバーサプライズといいますが、今回の選挙では、それが両候補に起きました。まず、10月に入った途端にトランプ氏の連邦所得不払い問題が出て、彼に不信の目が向けられます。ところが今度は、クリントン氏がウォール街のゴールドマン・サックスで行った非公開のスピーチの中で、公にはTPPに反対していたのに、自由貿易体制を主張する内容を語ったことがウィキリークスにアップされ、クリントン氏に不信の目が移ります。しかしその後、トランプ氏にわいせつ発言と女性スキャンダルがあり、トランプ氏に厳しい目が向けられました。この時点でクリントン氏の有利が大きく報道されたのですが、投開票日の11日前にFBI(米連邦捜査局)のコミー長官がクリントン氏のメール問題を再捜査するという発表を行い、形勢がまた変わります。結局、再捜査は行われないことになりましたが、その発表は投開票日の2日前でした。その結果、有権者の3割にも達していたという無党派ジレンマ層の47%がトランプ氏に投票し、クリントン氏に投票したのは42%でした。オクトーバーサプライズとは、ただ驚くべき出来事が起きたことではなく、それをどうマネジメントするのか、候補者の危機管理能力が注目されます。わいせつ発言などを“ロッカールームのジョーク”にしたトランプ氏に対して、メール問題に有効な手立てができなかったクリントン氏との差が出たといえるかもしれません。

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