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トランプ氏の勝利によって高まるhateの潮流にストップ!を

明治大学 政治経済学部 教授 海野 素央

白人労働者層を熱狂させた鋭いメッセージ

「クリントン陣営で実際に使用されたプラカード」
「クリントン陣営で実際に使用されたプラカード」
 また、今回の大統領選挙を通して感じられたトランプ氏とクリントン氏の差は、メッセージの鋭さです。トランプ氏は2015年6月16日に出馬宣言をしましたが、以来一貫して「アメリカを再び偉大な国に取り戻す」というメッセージを発信し続けました。その内容は、反移民、反自由貿易体制、反グローバルに徹底され、低賃金や職がない白人労働者や白人退役軍人の不満や怒りを結集させる、いわば「同文化連合軍」を形成していきました。トランプ氏のメッセージには、白人の不満層を熱狂させる鋭さとパワーがあったのです。

 それに対して、クリントン氏はオバマ大統領と同じ「異文化連合軍」の選挙モデルを用い、アメリカ史上初の女性大統領を訴えましたが、「オバマをアメリカ史上初の黒人大統領にしたい」という当時の熱気を生み出すことはできませんでした。その原因のひとつは、メッセージです。クリントン氏は2015年4月に立候補していますが、当初は「中間層のために戦う」がメッセージでした。ところが、このメッセージがまったく浸透していないことを陣営は感じ、2016年7月になって、「Stronger Together」(一緒になればもっと強くなれる)というメッセージを発信し始めます。実際、私が2015年8月にニューハンプシャー州で戸別訪問を行ったとき、「中間層のために戦っているのはヒラリーではない。トランプだ」と白人無党派の女性に言われました。陣営の運動員は新メッセージが出る1年も前に、最初のメッセージは有権者から否定されていることを感じていたのです。つまり、クリントン氏は立候補から15ヵ月間もメッセージの空白があった間、トランプ氏のメッセージは着々と白人労働者層に突き刺さっていたのです。

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