電気自動車の普及の鍵を握る“パワエレ”とは何か?

地球温暖化の抑制と持続可能な社会の実現。そのカギを握るのは「脱炭素化」です。中でも自動車産業は二酸化炭素排出の大きな割合を占めており、電気自動車(EV)や再生可能エネルギーの普及が急務とされています。その根底を支えているのが、私たちの生活に欠かせない「パワーエレクトロニクス」という技術です。
脱炭素社会の実現に欠かせない「パワエレ」
地球温暖化の抑制と持続可能な社会の実現は、今や世界共通の喫緊の課題です。その中心にあるのが二酸化炭素(CO2)排出量の削減であり、とりわけ自動車産業は大きな責任を負っています。
政府統計によると、2023年度の国内消費エネルギー全体に占める自家用車や貨物トラックといった運輸部門の割合は24.1%であり、家庭部門(14.8%)を大きく上回っています(経済産業省資源エネルギー庁「エネルギー動向2025年6月版」)。また、同年度における日本の二酸化炭素排出量のうち19.2%は運輸部門に由来しており、その中で自動車が占める割合は実に85.7%にも達します(国土交通省「運輸部門における二酸化炭素排出量」令和7年10月2日更新)。
こうした背景から、自動車の脱炭素化は環境問題を解決するために避けては通れないテーマとなっており、電気自動車(EV)やハイブリッド車(HEV)の普及が社会全体の大きな転換点を担う技術として注目されてきました。
しかし、現実には必ずしも順風満帆ではありません。最近では欧米や中国を中心に、EVの販売が一時的に鈍化していると報じられています。その要因としては、補助金が終了した後の販売減少や十分に整備されていない充電インフラ、そしてガソリン車に比べて依然として高い車両価格などが指摘されています。
それでもなお、国際会議や学術シンポジウムに参加すると、世界中の半導体メーカー、自動車メーカー、さらには大学や研究機関の研究者たちが集い、次世代のパワーエレクトロニクスやモビリティ電動化の可能性を熱く議論している光景に出会います。
その議論の方向性は明確で、「EVの普及は一時的な停滞はあっても、大きな流れとして後戻りすることはない」というものです。さらに、研究開発は電気自動車にとどまらず、電動航空機に至るまで拡大し続けています。
EVにとって特に重要な技術がモータとインバータを中心とした電力変換システムです。多くの人はEVの航続距離をバッテリー容量で語りがちですが、実際には電力をどれだけ効率よく変換してモータを動かせるかが大きく影響します。
損失を減らして効率を高めることができれば、同じバッテリーでもより長く走れるようになり、結果としてユーザーに「安心して遠出できる」という体験価値を提供できます。これは単なる技術的な改善ではなく、EVを選ぶ理由そのものに直結する重要な要素です。
一方で、EV普及の最大のハードルとして残っているのが充電に関する不安です。実際のユーザーの声を聞くと、「ガソリン車のように数分で補給できないと不便だ」「地方や高速道路で充電ステーションが不足していると不安になる」という意見が少なくありません。しかし後述するように、この点についても世界中で技術開発やインフラ整備が進んでいます。
つまり、EVの普及は単なる車の進化にとどまらず、社会全体のエネルギーシステムそのものをどう再構築するかという壮大な挑戦につながっています。その中心に位置するのが、私が研究しているパワーエレクトロニクスという分野です。電気を「どう効率よく・どう使いやすく」変換して届けるか。この技術が、次世代のモビリティ社会の基盤を形づくるものと私は考えています。
※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。
