電気自動車の普及の鍵を握る“パワエレ”とは何か?
「省エネ」を考えることで暮らしも豊かになる
私の専門は、発電所や電力網といった大規模な系統制御よりも、さらに一歩下流にある電力変換器自体です。つまり、どのように効率よく電力を変換し、製品に組み込むかを研究しています。電気自動車を例にすると、車両内部にあるインバータやモータ、そしてそれを動かす制御技術が主な研究対象になります。
具体的なテーマの一つが、短時間での急速充電です。イメージしやすいのはスマートフォンです。多くの人が「できるだけ短時間でフル充電したい」と思うでしょう。しかし急速充電をした際にスマートフォン本体や充電器が熱くなった経験はないでしょうか? あの熱こそが、電力変換の過程で生じるエネルギーロス、つまり電気が熱として逃げている状態なのです。
そこで重要になるのが高効率な電力変換器です。変換効率が高まればロスが減り、発熱も抑えられます。その結果、デバイスを傷めるリスクが下がり、安全かつ高速に充電できるようになります。
電気自動車に話を戻すと、この高効率化は航続距離の向上に直結します。ロスが少なければ同じバッテリー容量でも長く走れるからです。さらに、小型で効率的な変換器が実用化されれば、車両の軽量化が進み、航続距離はさらに伸びます。小型化によって余った車内スペースを快適性や収納に活用できるという利点もあります。
また、効率が上がれば放熱が減るため、冷却装置の必要性も低下します。パソコンを使っていて突然ファンが勢いよく回り出し、「うるさいな」と思った経験がある方は多いと思います。これも内部の部品が発熱しているから起きる現象です。もしロスが抑えられれば、こうした冷却の負担が軽くなり、静かで省エネなシステムにつながります。
さらに、私の研究室では「ワイヤレス給電技術」にも取り組んでいます。これはケーブルを使わず、地面に埋め込んだコイルから電力を送る仕組みです。送電側のコイルで発生させた磁束を、受電側のコイルで受け取ることで電気を伝える「相互誘導」という原理を使っています。

パワーエレクトロニクス研究室」ホームページ/
「まんがでわかるパワエレ」作・画 まえかわ さり)
この技術を電気自動車に応用すると、駐車場に停めるだけで自動的に充電できる未来が見えてきます。さらに発展すれば、高速道路に「給電レーン」を設け、走行中でもバッテリーを充電しながら走れるようになるかもしれません。そうなれば、航続距離の不安は大きく減り、EVがより身近で便利な存在になるはずです。
環境対策や省エネルギーと聞くと、つい「コスト」や「制約」といったネガティブなイメージが先に立つかもしれません。けれども、パワエレの進歩は、むしろ利便性や快適さを高め、社会の新しいビジネスや価値を生み出します。次世代モビリティの未来を考えることは、私たち自身の暮らしや仕事のあり方を考えることにもつながっていくのです。
※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。
