電気自動車の普及の鍵を握る“パワエレ”とは何か?
再生可能エネルギーの安定化の鍵は「動く蓄電器」
パワーエレクトロニクス、略して「パワエレ」とは、半導体を使った回路によって電力を変換・制御する技術のことです。難しそうに聞こえますが、実は私たちの日常生活にすでに深く入り込んでいます。
たとえば、家庭用の冷蔵庫のインバータ制御やエアコンのコンプレッサ制御、工場で活躍する産業ロボット、鉄道のモータ駆動など、あらゆる場所でパワエレが使われています。いわば、現代の暮らしを支える「縁の下の力持ち」といった存在です。
そもそも電気で動く製品は、単に電力をそのまま供給すればよいわけではありません。電圧や電流の大きさや形を機器に適したものへ調整する必要があります。代表的な技術としては、直流(DC)の電気を交流(AC)に変換する仕組み(=インバータ)が挙げられます。交流は家庭のコンセントで使われている電気の形で、冷蔵庫や洗濯機などの家電を動かすのに不可欠です。
近年は温室効果ガス削減の観点から、風力や太陽光といった再生可能エネルギーが注目されていますが、ここでもパワエレは重要な役割を果たしています。たとえば太陽光発電は生み出す直流の電気は、そのままでは家庭や企業で使えません。高電圧に変換したうえで、さらに交流に変換する必要があります。
その変換を担っているのが、パワーコンディショナと呼ばれる装置です。太陽光パネルを設置した家に必ずある大きな箱のような機械で、その中に直流を昇圧するDC/DCコンバータや、直流を交流に変換するDC/ACインバータが組み込まれています。もしこれらの効率が高まり、装置がより小型化されれば、家庭での太陽光発電導入のハードルはさらに下がるでしょう。
とはいえ、再生可能エネルギーには課題があります。それは「発電量が安定しない」という点です。太陽光は天候や日照時間によって変動し、風力も風が吹かない日には発電できません。一方で、私たちの生活やビジネスに必要な電力需要は常に一定水準で存在します。このギャップを埋めるのもパワエレ研究の重要テーマです。電力を効率よく変換し、かつ安定して供給する仕組みを作ることが、再生可能エネルギーの本格普及につながります。
この課題解決のカギを握るのが蓄電技術です。最近では「V2G(Vehicle to Grid)」と呼ばれ、電気自動車を単なる移動手段ではなく「動く蓄電器」として活用する考え方が現実的になっています。
たとえば日中に太陽光発電で余った電力をEVに蓄えておき、夜間や曇天の日など発電量が不足するタイミングで、その電力を家庭や地域の電力網に供給します。こうすることで電力系統全体を安定させられるのです。すでにフランスなどヨーロッパの国々では実証を超えて実用化段階に入っており、今後は日本でも普及が進む可能性があります。
パワエレは、こうした再生可能エネルギーの安定供給や効率化の根幹を支える技術なのです。単なる電気の変換にとどまらず、社会のエネルギーシステムそのものを変える力を持っていると言えるでしょう。
※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。
