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トルコのクーデター失敗は“最良のシナリオ”へと続くのか

山内 昌之 山内 昌之 明治大学 研究・知財戦略機構 特任教授 (退任)

トルコで7月15日に起きた軍の一部によるクーデターは、失敗に終わりました。一部とはいえ、なぜ軍が大統領に反旗を翻したのか、なぜ市民は反乱を起こした軍に立ち向かったのか、そして、これからエルドアン大統領とトルコはどうなるのか。本学の「国際総合研究所」で、中東・イスラムを研究する山内教授にお話をうかがいました。

民主国家として成熟しているトルコ

山内 昌之 今回のトルコのクーデター未遂問題を考えるには、まず、いまトルコの置かれている状況を考えなくてはいけません。2010年から起こったアラブの春以降、特にリビア、イエメン、シリア、イラクの4ヵ国は内戦や内乱が続き混迷を深めているのに比べ、トルコは中東で最も安全な国でした。もちろん、すべてが順調なわけではありません。国内にはクルド問題を抱えていますし、対外的には、トルコの領空を侵犯したロシア軍機を撃墜したことでロシアとの関係は悪化しました。パレスチナのハマースを支援するトルコ人ボランティアをイスラエル軍が攻撃し10人を死亡させる事件が起き、イスラエルとの関係も険悪になっただけでなく、クーデターのあったエジプトや、内戦の続くシリアとも関係は悪くなっていました。さらに、当初は武器や送金を許していたIS(「イスラム国」)に対しても、欧米からの圧力で敵対の方向に舵を切るなど、トルコの対外関係は脆弱な状況であるといえます。それでも、選挙によって政権交代を行うなど、民主国家として成熟した側面を示すトルコは、中東で最も安定した政治体制の国であることは間違いありません。

 トルコを安定した民主国家にしている理由のひとつは、EUの準加盟国としてヨーロッパとのつながりが深く、長い歴史の中でヨーロッパ的なファクターを抱えてきた点が大きいといえるでしょう。また、イスラム教の国でありながら、宗教から政治や教育を切り離すという「世俗主義」を公言している中東で唯一の国でもあります。こうした点が、トルコを他のイスラム諸国と一線を画すことにつながっていたのです。

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