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移民を引き寄せるアメリカの魅力が、日本にはあるか

明治大学 政治経済学部 専任講師 下斗米 秀之

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アメリカのトランプ政権は、発足当初から移民を規制する姿勢をとっています。その根底にあるものや、それを支持する白人労働者について、様々な観点から語られていますが、アメリカの経済史の観点から見ると、そこには、日本も学ぶべき点が見えてきます。

経済史でもあるアメリカの移民の歴史

下斗米 秀之 アメリカの移民や労働者の歴史を研究していくと、いまのトランプ大統領のめざす移民制限政策が、これからのアメリカになにをもたらすのか見えてきます。また、それは決して他人事ではなく、日本が学ぶべき点も非常に多いと思います。

 そもそも、アメリカは移民によって形成された国であり、19世紀末までほとんど無制限に移民を受け入れてきました。19世紀に交通革命が起こり、鉄道や蒸気船などの輸送コストが低下されたことによって「大量移民の時代」が始まり、世界はグローバル化していきます。最も多くの移民が目指したのがアメリカでした。

 19世紀末から20世紀にかけて、アメリカへの移民はピークを迎えます。日本人移民も増えましたが、何よりもヨーロッパからの移民、とりわけそれまでのイギリスやドイツなどの北西欧からではなく、イタリアやロシアなど東南欧からの移民が、短期間に大量に流入しました。ヨーロッパ移民をアメリカ産業社会に包摂したことは、世界一の工業大国を生み出す原動力となりました。移民という労働力供給があったからこそ、アメリカの資本主義経済は発展したといえます。

 一方で、そうした移民たちがアメリカ社会にスムーズに溶け込めたかというと、決してそうではありませんでした。同じ白人でも、西欧や北欧系の旧移民はWASP(White、Angro-Saxon、Protestant)という社会層を形成し、南欧や東欧の新移民との間で、宗教や文化などの違いから摩擦が起こるようになります。

 また、移民が増えたことで自分たちの立場が脅かされることを恐れたWASP層は、移民制限の動きを強めます。その中心となったのが労働組合でした。労働組合にとって新移民は、自らの賃金水準や労働環境の低下、失業をもたらす競争相手に映ったのです。

 その結果、1924年には移民の出身地や移民個人の資質に応じて入国者を選別する出身国別の移民割当法が成立します。この法律では日本人も帰化不能外国人とされ、事実上日本人の移民を禁止したことから、一般に排日移民法とも呼ばれています。

 この移民法が改正され、出身国別割当制度が撤廃されるのは第二次世界大戦後の1965年です。この時、産業界の労働力需要に応えて技能労働者には優先枠が設定され、アジアからの移民が急増しました。アメリカの経済力が名実ともに世界のトップに君臨したこの時期に移民の受け入れにも積極的になったのです。

 このようにアメリカの移民の歴史を見ていくと、労働力需要に応じて、世界各地の移民労働者を受け入れながら経済を発展させてきました。一方で、移民流入によって引き起こされる様々な摩擦が大きくなったり、労働力が飽和状態になったりすると、移民を制限したり排斥したりする機運が高まることがわかります。アメリカの移民政策の歴史は、まさに資本主義経済の歴史の一環として見ることができるのです。

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