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2021.06.30

ヨーロッパに学ぶ日本の「移民問題」

ヨーロッパに学ぶ日本の「移民問題」
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コロナ禍により、日本社会の様々な歪みのようなものが露呈しました。例えば、外国人労働者に頼りつつ見ぬふりをする日本社会の実態もそのひとつです。その問題に十分な対応ができていない日本は、ヨーロッパの歴史に学ぶことが必要なのかもしれません。

外国人技能実習生の実態は労働者

荒又 美陽 2020年から続く、新型コロナウイルスが引き起こしたパンデミックによって、日本でも露わになった社会の歪みのようなものがあります。外国人労働者の問題もそのひとつだと思います。

 例えば、日本は技能実習生という形で外国人を受け入れてきました。ところが、受け入れ先の会社がコロナ禍で休業などをして、実習生が仕事を失うという事態が生じました。

 外国人技能実習制度では、異業種に転職できる仕組みはありませんでした。仕事はなく、帰国もできない状態であった彼らに対し、農業などに移ることができる特例が急遽、設けられることになりました。

 技能実習生は、名目上は学びに来ていることになっていますが、実際には彼らが労働者として期待されていることはだれもが知っていました。問題は、それにもかかわらず、日本が転職を実習生の当然の権利として認めてこなかったことです。

 それが、別の業種で人が不足しているとなれば、制度ができてきたわけです。今回、実習生も就労先が見つかれば助かったとは思いますが、それなら学びに来ているなどという建前は、最初から外しておくべきだったと考えます。

 また、新型コロナウイルス対策のために、日本も、世界からの入国を制限する措置をとりましたが、「ビジネス往来」は認めるとしました。

 名称からは、大企業のエグゼクティブを指すように見えます。しかし入国した人を見ると、東南アジアが多いことに気づきます。実際には多くが技能実習生であったといいます。

 つまり、日本の産業界にとっては、技能実習生という労働力は、コロナ禍にあっても必要不可欠なものだということであり、政府は産業界のそうした要請をすぐに制度化したのです。

 やはりこれは、日本にとって必要不可欠な外国人労働者の受け入れを、技能実習生などという言い方で曖昧にしてきた、日本社会や産業界の大きな歪みだと言えます。

英語版はこちら

※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。

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