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日本の主権者教育は、世界に40年以上遅れている!?

藤井 剛 藤井 剛 明治大学 文学部 特任教授

主権者教育に非常にナーバスな教育の現場

 実は、投票率も決して上がっているわけではありません。2016年の参院選の18歳の投票率は51%でしたが、翌2017年の衆院選の19歳の投票率は33%と、1歳年をとっただけで18%も下がっているのです。それはやはり、広義の意味での主権者教育が足りていないからだと思います。

 ではなぜ、広義の主権者教育が浸透しないのか。それは、いままで現実の政治を具体例として取り上げる主権者教育が行われてこなかったことが原因だと思います。

 例えば、文科省が急に主権者教育を実施するといっても、現場の先生たちは困惑しています。それは、いままで教員には中立性原則があり、現実の政治について語るのはタブー視されていたからです。

 そこで、文科省と総務省は主権者教育のための副教材として「私たちが拓く日本の未来」を作成し、全国の高校生と教員に配布しました。このテキストの作成には私も関わりました。しかし、それでも主権者教育の浸透は難しいことを実感しています。

 例えばある高校で、集団安保の是非をテーマに生徒たちが討論会を行う授業がありました。その際、新聞の大手2紙が資料として使われたのですが、県議会で新聞2紙だけを取り上げるのは偏向ではないかと問い質されたのです。その結果、教育長が謝罪する事態になりました。

 私たちの作成した副教材では、対立する内容をテーマとする場合は、それぞれの意見や説をきちんと取り上げて比較検討させればよいこととしています。つまり、この高校が行った授業はガイドラインに沿っており、アクティブ・ラーニングも取り入れた良い授業だったといえます。しかし、政治教育をタブー視する感覚が、このような主権者教育を問題視してしまうのです。

 また、「議員の生活」をテーマとした授業を行う際、ただ教科書に書かれたことを読むだけでなく、現役の議員に来てもらい、生の声で語ってもらおうという取り組みにも、どの政党の議員を呼ぶのかで問題になりました。

 議員といわれる人たちが、日頃、どのように市民の声を吸い上げ、必要に応じて勉強会や研究会を行い、法律案や条例案を提案するなどの活動を行っているか、生徒たちに学んでもらう授業です。

 その議員活動は、どの政党であれ基本的に変わらないはずです。しかし、いまだにこうした取り組みにナーバスになる学校があるのです。

 一方で、現実の政治を扱うことに前向きな県もあります。政党の異なる複数の県議会議員に来てもらい、例えば、「集団安保の是非」をテーマに生徒たちと討論会をする学校もあります。こうした取り組みが広義の主権者教育に繋がっていくのです。

 しかし、特に政治サイドから、それらを問題視する声があるのでは、現場の先生たちは困惑し萎縮してしまいます。そこで私たちは、要請に応じて各県に出向き、主権者教育のための研修会や講演を行ったり、ときには、このように現実の政治を取り上げても大丈夫だと先生たちに向けて実際の授業例を行って見せたりすることもあります。

 ここまでやって良いのだ、ここまでやるべきだという模範授業を見てもらうと、先生たちはまず真似をすることができますし、自信をもつこともできます。こうした活動が、教育現場を変えていく私なりの方法であると考えています。

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