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日本の主権者教育は、世界に40年以上遅れている!?

明治大学 文学部 特任教授 藤井 剛

世界に追いつかなくてはならない日本の主権者教育

藤井 剛 実は、こうした取り組みにおいて、日本はかなり遅れています。戦前の教育がトラウマになり、異常にナーバスになっているのかもしれません。同じく、第2次世界大戦の戦犯国とされたドイツでは、いまから40年以上も前の1976年に「ボイテルスバッハ・コンセンサス」を打ち出しています。

 それは、「教員は生徒を期待される見解をもって圧倒し、生徒が自らの判断を獲得するのを妨げてはならない」、「学問と政治の世界において議論があることは、授業においても議論があることとして扱わなければならない」、「生徒が自らの関心、利害に基づいて効果的に政治に参加できるよう、必要な能力の獲得が促されなければならない」の三原則からなっています。

 実際、ドイツの授業を見ると、ひとつの政治的なテーマに対して様々な意見があることを教員が示し、それを基に生徒たちに議論することを促します。さらに、教員自身が自分の意見を表明することもあります。

 しかし、教員は自説によって生徒の意見を圧倒することはありません。つまり生徒にとっては、身近な大人の意見を聞くということであり、それによって教員と生徒のコミュニケーションが深まるのですが、教員の意見も生徒の判断材料のひとつでしかないということです。

 イギリスでは、市民生活全体の感覚を養うという意味でシチズンシップ教育を行っています。私が見た授業では、医師、看護師、ソーシャルワーカー、大学の教授に来てもらい、「がんの告知をすべきか」をテーマに各々が15分ほど話をしたあと、生徒たちは彼らに質問をしたりしながら、グループで議論を行っていきます。

 政治的なテーマでもないのに喧々諤々の議論になりますが、それは「がんの告知」を自分たちの身近な問題として捉えているからです。親や身近な知り合いががんになったとき、自分はどうすべきか、それを人生の問題、市民の問題として捉え、議論していたのです。

 イギリスの市民のシチズンシップ、すなわち公民権意識はこうやって醸成されていくのだと思いました。

 同じようにアメリカでは、大統領選挙の模擬投票を幼稚園でも行っています。候補者の主張を、先生が園児たちに噛み砕いてわかりやすく教え、それを基に園児たちはより良いと思う候補者を判断し投票するのです。

 世界各国がこうした教育を行っている中で、日本はようやく主権者教育に本腰を入れ始めました。しかし、そうした教育に必要以上にナーバスであったり、問題視したりする人たちもいます。

 日本の主権者教育を推進するために、まず教員の教育に力を注ぎ、さらに教員たちが教えやすい環境を整えていく活動を続けることが、私たちのなすべきことであると考えています。

 また、家庭でも政治の話をタブー視するのではなく、気軽に話す感覚をもってもらえればと思います。実は子どもの頃に、親が投票場に行くときに一緒について行った経験がある人は、なかった人に比べて投票率が約20%高いという調査があります。子どもにとっては、些細な経験も、家庭教育に繋がるのです。

>>英語版はこちら(English)

※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。

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