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2014.02.01

目的があれば英語は習得できる ―『日本人の英語』の現在―

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英語教育を巡る「神話」のウソ

 日本人の英語力に関して2つの神話があります。1つは、「日本人は文法に詳しく、読み書きはできるが会話はできない」というものですが、私の大学での経験では、来日当時も今も文法を覚えていないから一般の学生は書けないし、読んでも正確に理解しているとは思えません。確かに「分詞構文」などのような文法用語だけは知っていますが、それが使えるかどうかは別の問題です。一方、聞き取りと発音のほうは20年前と比べて確かによくなってきています。その背景の1つは、中学・高校の英語教師の英語レベルが向上していることでしょう。さらに、電子機器やインターネットの普及で、24時間英語を聞くことができる環境であることも功を奏していると思います。2つ目の神話が、「受験英語と実際の英語とは違う」というものです。半世紀前ならばいざ知らず、近年の入試にはバランスがよく取れている、ごくふつうの英語しか出てきません。「実際に使われているものとは違う英語」と言えば、中学・高校で使われている教科書に出てくる英語です。限られた文法と語彙で自然な英語を作るには相当の工夫が要るのですが、私がこれまで見てきた日本の学校で使われている英語教科書では、「相当の工夫」を凝らしているというより、誤った英語や不自然な英語を紹介している例のほうが目立ちます。

国民全員が英語を覚える必要はない

マーク・ピーターセン教授 現状は、日本国民の全員が、否が応でも英語を覚えなければならない、ということになってしまっています。そのため、授業は全員が問題なくついていけるようにプログラムされていて、内容はだいぶ薄くなっています。そもそも外国語は日本人が何十人も集まってやるものではなく、音楽やスポーツと同じく、やる気のある人が自分から進んで反復練習をし、日々の努力の積み重ねで技術を身に付けるものです。「学校で何年も英語をやったのに私は全然話せない」というような不満を漏らす日本人も少なくないようですが、「学校で何年も音楽をやったのに私は全然作曲できない」とか「学校で何年も体育をやったのに私はスポーツが全然だめだ」といったような文句を聞いた覚えがありません。
 “国際人”という言葉が古くなったせいか、最近“グローバルな人材”や“グローバル・マインドをもった企業”というような言葉が流行していますが、実際問題、“グローバルに”活躍する必要のある日本人は国民の1割にもならないでしょう。そして、そうしたニーズを感じた人は、自発的に本気で学習するはずです。幸いなことに、明治大学は留学に力を注ぎ、学生支援を行い、昔より多くの学生が留学をすることが可能になっています。やはり、外国語の技術を身に付けるために一番の近道は留学です。また、日本は英語教材の“天国”ですので、たとえ留学ができなくても、学ぶ意欲さえあれば多種多様な教材を手にすることができます。私はNHKのラジオ講座が特にいいと思います。講座内容が充実していることに加えて、学習の継続性を可能とする点が効果的です。学生の場合、ぜひ大学の授業を参考にし、さまざまな学習資源をフルに活用していただきたいです。

※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。

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