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災害と復興は、そこに関わる人の人生に大きな影響を及ぼす

災害が起きると、災害復興を行うのは当たり前と、多くの方が信じていると思います。しかし、被災された住民の方々は、災害復興は本当に必要なのか、というところから悩まねばなりません。

例えば、過疎高齢化が進んだ、高齢の住民が大多数を占め、若い人たちはみんな町に出ていっているという集落が被災をしたとします。すると、そもそもの集落の状況から、これを機会に子どもとの同居を選ぶ方、福祉施設への入居を選ぶ方、家業をたたむことを決める方など、集落は急激な人口減少・働き手の減少に見舞われることが少なくありません。そうした中では、やむを得ず、集落を解散するという判断も出てくるのです。実際、東日本大震災で被災した地域では、自治会の解散宣言をしたところもあります。

これは極端な事例ですが、要は、災害復興は行われて当然のものではなく、被災をした土地に住む人々が、もう一度、その土地で暮らしを営んでいこうという意志の存在をを前提としているということです。

さらに、その地域でどのように生きていくのかをあらためて問い直し、その中で、復興はひとつの形をなしていきます。

つまり、災害復興とは、自らの生活や、自らが暮らす地域において守るべきもの、失われるべきでないものはなにかを再発見し、その達成を目指していく過程であると言えます。

例えば現在、東日本大震災の被災地では、10m以上の高さをもつ巨大防潮堤が次々と完成、あるいは完成見込みとなっています。都市部に暮らされている方にとって、このような巨大防潮堤のはなしは、安全性が確保できて素晴らしいとお感じになったり、もしくは巨額の建設費に見合う効果があるのかといった点を問題視されるかもしれません。しかし、そうした視点は、「地元に住む被災者は巨大防潮堤を望んでいるはずだ」という前提に立った視点なのではないでしょうか。

もちろん、津波を目の前にした恐怖、津波によって家族や親族、友人に犠牲が出てしまった悲しみのなかで、当時、多くの方が巨大防潮堤と高台移転による安全な暮らしを願ったということは事実です。しかし、同時に、とくに水産業の盛んな三陸リアス部では、海と暮らすという生活のあり方を大きく変えざるを得ないということに、今日にいたるまで大きな葛藤を抱え続けているというのも事実なのです。

地元の方からはよく、「海に食わせてもらっている」という言葉を聞きますが、良い時も悪い時も、海と向き合って暮らしてきたという暮らしのあり方が、よくわかる言葉だと思います。このような暮らしが、10m以上という巨大防潮堤によって変化する、その変化の大きさを考えるには、津波の記憶はあまりに鮮烈で、巨大防潮堤が本当に必要なのかを冷静に考えはじめる頃には、すでに工事は進んでしまっていました。

重要なことは、巨大防潮堤は正しいか、正しくないか、という話ではなく、巨大防潮堤という変化を受け止め、新たな社会を作り出すということが、十分に飲み込めていないままで、事業だけが先行し、本来は当事者の幸せを目指していくはずの復興が、むしろ、葛藤を生み出しているということなのです。

災害復興は、それが行われる社会を変容させるとともに、そこに関わる人々、一人ひとりの生き方、人生にも大きな影響を及ぼします。自分たちの社会が、災害から立ち直ろうとする中で、新たに求めるもの、あるいは守るべきものを、議論し、調整し、判断し、みんなの納得をつくりだしていくこと、そしてそれを政策にまで反映させることは、本当に大変で困難な作業です。

被災のなかった都会で暮らす私たちは、被災地にできあがっていく美しい町の姿を報道などで見て、復興と呼びますが、災害復興とは、決して、美しい町ができあがることだけではないのです。

私は、自然災害からの復興とは、人間社会がその地域コミュニティにおける適応策を模索していく悪戦苦闘の過程であると捉え、そのなかで、当事者の「生」を成立させる、という考え方が重要だと考えています。

では、そこに、都会に暮らすような私たちは、どのように関わっていくことができるのでしょう。

次回は、私たちができること、すべきことについて解説します。

#1 自然災害の備えに正解はない!?
#2 どうすれば安全な避難ができるの?
#3 住民主体の防災とは自己責任ということ?
#4 復興とは町を元に戻すこと?
#5 災害に備えて私たちにできることは?

※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。

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