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クリティカル・シンキングを身につけることが大切

ノーベル経済学賞は、2017年にセイラー教授が受賞する前、2002年にも行動経済学を研究するダニエル・カーネマン教授が受賞しています。このカーネマン教授は、理性によって感情や思いこみの暴走を抑制するための完全な方法はない、と言っています。確かに、人の理性が完璧に機能するのであれば、行動経済学自体が必要ないことになります。それでも、感情をある程度抑える方法はあります。

第一は、やはり、知ることです。自分自身に、非合理的ともいえる消費行動があること。そして、企業にはこうした消費行動を利用するテクニックがあることです。前回述べたような企業のテクニックを知っておけば、理性が働くきっかけになると思います。実は、私が行動経済学の一般向けの講演を行うと、最近は、300人を超える参加者があり、関心の高さを感じます。こうした講演に参加したり、関連の本を読んで自ら学ぶことも重要です。また、仮に、企業のテクニックに引っかかったと思ったときでも、劣等感をもつ必要はありません。人間であれば、だれにでもある心理を突いてくるのですから。これで企業のテクニックをひとつ学習したと思えば良いのです。

第二は、第三者の意見を聞くことです。セールス会場に行くときは、そのセールスに興味のない人に一緒に行ってもらうと、無駄な買物を止めてくれるかもしれません。つまり、自分と感情が異なる人の意見は、自分にとっては理性の声になるのです。

第三は、難しいですが、自分の中に第三者をつくることです。日頃から意識して、自分の行動を俯瞰できるような冷静さを育むことです。それが難しければ、決断までに時間をおくことも有効です。時間が経てば強い感情も薄くなります。翌日になっても欲しいと思えば買う、というルールをつくるのも良い方法です。

このように、ちょっと待って考えてみることをクリティカル・シンキングといいます。自分が思いこみや感情に左右されていないか、きちんと考え、正しく判断することです。このクリティカル・シンキングを育むことは、消費行動だけでなく、賢く生きることの基本になると思います。

次回は、経済政策に行動経済学を活かすことについて解説します。

#1 いま注目の行動経済学って、なに?
#2 行動経済学で賢い消費者になれる?
#3 失敗しない買物テクニックとは?
#4 行動経済学で政策も成功する?
#5 行動経済学で企業経営も成功する?

※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。

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