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#2 フードバンクは食品ロスと生活困窮者を救う?

小関 隆志 小関 隆志 明治大学 経営学部 教授

しっかりとした全国組織で運営されるフードバンクの活動

現在、日本にはフードバンクの全国組織が2つあり、分かれて活動していますが、活動の仕組みはだいたい同じです。

本部が、食品企業などを中心に大量の食品を貰い受け、それを加盟している団体に配布します。各々の団体では、地域の福祉施設や生活困窮者世帯などにその食品を無償提供するのが基本的な流れです。

食品が必要な福祉施設はフードバンクの団体に申し出て、互いに約束事項を確認し、互いがそれを遵守する形で食品の提供が進むケースが多いようです。

福祉施設側は、フードバンクから受け取る食品だけですべての食事がまかなえるわけではありませんが、無償提供によって食費を大幅に抑えることができ、その分を他のサービスに充てることができます。

生活困窮者の場合は、生活困窮者自立支援事業や社会福祉協議会などに生活の状態を相談すれば、そこからフードバンクに連絡がいき、食品を送ったり、取りに行くことができます。

他にも、店舗のようなところで食品を配布するパントリーと呼ばれるスタイルや、食堂のような形で料理を提供するようなスタイルもあります。

いずれも、運営にかかる経費を少しいただく場合もありますが、無償提供が原則です。

食品ロスの観点から見ると、現在、日本では、年間に600万トン以上の食品が、まだ食べられるのに破棄されていると言います。

その理由はいくつかありますが、ひとつは、日本の食品流通業界の商習慣で、販売期限を、製造日から賞味期限までの3分の2にすることです。それを過ぎると、消費期限はまだあるのに店頭から撤去され、廃棄されてしまうのです。

また、パッケージが傷んでいたり、野菜などの場合は形が規格外だと、店頭に並べられることもありません。これは、確かにもったいない話です。

食品を寄付する企業側としては、「食品リサイクル法」などがありますし、また、食品ロスに対する社会的な目が厳しくなっていることもあり、食べられる食品を食用として引き取ってもらえることはメリットがあります。

もちろん、食品の消費期限の問題や、フードバンクに渡したあとの管理の問題などもあるので、厳しい規定を網羅した同意書を交わした上で、食品の寄付を行っています。

フードバンクのこうした取り組みを見ると、食品ロス対策になるし、福祉にも役立ち、一挙両得の活動に思います。

しかも、それは人々の善意の上に成り立っているのですから、もっと拡充したいと考える人もたくさんいます。

しかし、一方で、本当にそうだろうかという疑問をもつ人たちもいます。フードバンクのなにが問題で、そこにはどんな課題があるのでしょう。

次回は、フードバンクの課題について解説します。

#1 フードバンクとは?
#2 フードバンクは食品ロスと生活困窮者を救う?
#3 フードバンクはどれくらいの食品を配布しているの?
#4 フードバンクが正しいというのは間違い?
#5 フードバンクと社会保障制度は連携するの?

※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。

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