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#4 日本人は税金の意義を理解していない?

星野 泉 星野 泉 明治大学 政治経済学部 教授

税金に対する理解を深めるのは、教育

スウェーデンの中学校で使う社会の教科書が日本でも出版されていて、結構売れているそうです。これを見ると、税金の意義として、税金をなくすと社会の大部分が機能しなくなると説明されています。

さらに面白いのが、不必要なものを買うこと、すなわち浪費は止めようと書かれています。お金が充分にないときは支出を切り詰めることが必要だし、浪費はゴミの山をつくることになり、環境を悪化させると説明されています。

一見、当たり前のことを教えているだけのように思えますが、私たち自身の生活を振り返ってみると、日本人はまったく逆のことを考えていることがわかります。税金はできれば払いたくないと思っていますし、だから増税には反対で、それにもかかわらず自分の生活に関わる公共サービスを切り詰めることは困ると思っています。

また、消費拡大することが経済を良くすることだと教えられ、お金を使うことに喜びのようなものを感じ、無駄遣いもあまり意識していません。でも、それで私たちは幸福なのでしょうか。

今年の3月に、世界幸福度報告(World Happiness Report=WHR)、いわゆる世界幸福度ランキングの2019年版が発表されました。

1人当たりGDP、社会的支援、健康寿命、人生の選択の自由、寛容さ、腐敗の認識の6つを指標とし、ポイント化され順位が決められるのですが、日本は毎回順位を下げ、今回は156ヵ国中58位です。

上位の国を見ると、公共部門規模、すなわち税金と社会保障負担や、財政支出規模の大きい国が入っています。

さらに注目すべきは、1人当たりGDPです。GDPは国単位で発表されることが多いのですが、概して人口の多い国はGDPが大きくなります。本当に見るべきなのは1人当たりGDPです。ところが、経済大国を自認する日本は、1人当たりGDPがOECDの平均値を下回っているのです。

実は、1人当たりGDPが上位の国は、税金や社会保障負担の大きい国とも重なるのです。つまり、増税は経済と生活に悪い影響を与えるというのは、日本人の誤った常識であり、国民一人ひとりが幸福になるためには、その誤った常識を再考しなければいけないのです。

もう一度、スウェーデンの中学校の教科書を見てみましょう。税金の意義や、浪費をしないことをしっかり教えられ、身につけることで、前回、述べたように、国民に「政府に貯金する」という意識が育まれます。その結果、スウェーデンの幸福度ランキングは、日本を大きく上回る7位であり、1人当たりGDPも日本を上回っているのです。

次回は、少子高齢化が進む日本で私たち一人ひとりが考えるべきことについて解説します。

#1 日本の少子高齢化は、さらに進むの?
#2 消費税の導入で生活者の負担は増えた?
#3 税金がなければ自由に使えるお金が増える?
#4 日本人は税金の意義を理解していない?
#5 増税によってみんなが納得できるようになる?

※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。

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