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2016.02.04

人民元は国際通貨といえるのか ―求められる中国金融システムの強化―

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成熟していない中国の金融制度

勝 悦子 近年、G7から新興国への世界経済の大きなレジームチェンジが起ころうとしていましたが、ここに来て、BRICsなどの成長著しかった新興国で様々な問題が露呈し、特にロシアやブラジルなどで経済の落込みが目立っています。なかでも中国の経済減速の世界経済への影響は大きく、国際経済にも大きな影響を与えることが懸念されています。昨年8月初めに起きた人民元の急落は世界同時株安をもたらし、今年に入ってからも人民元安、世界株安、そして質への逃避に伴う円高の示現、といった現象が起きています。IT技術の進展のもとで近年大きく金融のグローバル化が進みましたが、世界経済の相互依存性は一層高まっており、一国の政治経済上の変化が国際的に大きな影響をもたらす時代となっています。

 通貨の信認には最適な金融政策が重要となります。安定的成長のためには、ビジネスインフラである金融制度が強固であることが必要です。最近の状況を見ていると、新興国の金融制度は、法制度、会計制度、破産法制、プルーデンス政策などまだまだ多くの課題を抱えています。またコーポレートガバナンスも弱いと言えます。近年中国は通貨制度の柔軟化、金利自由化、対外取引規制の緩和など急激な市場化を進めましたが、一方で、急激な規制緩和をしたがゆえに国際資金フローのダイナミックな動きに翻弄されつつあります。さらに、地方政府債務をファイナンスしてきたシャドーバンキングの問題も含め、政府、企業、個人の債務は急増し、金融の不安定性が露呈されています。

 長い歴史の中で様々な危機を経験し、乗り越えてきた先進国ですが、グローバル化が進展するなか、国際的な金融ルールの策定も進んでいます。これらを学ぶことが、中国をはじめとした新興国には必要です。通貨の国際化を進めていく上でも、金融制度の強化がその責務を果たすことにつながるのです。その意味で、中国が世界の大学と連携し技術や知識を採り入れようとしていますが、金融経済においてもそうした動きがすすむことに期待しています。現在大学院の私の研究室にも多くの中国からの留学生たちがいますが、彼らは意欲的に学び、研究に勤しんでいます。

※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。

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