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実用化が近づく自動運転車に、いま必要なこと

中山 幸二 中山 幸二 明治大学 専門職大学院 法務研究科 教授

自動運転車の事故責任とは

 自動運転をめぐる法的課題としては、さらに事故時の法的責任の問題があります。民事責任に関しては、日本では自動車損害賠償責任保険(自賠責保険)があり、車の運転中に人身事故を起こした場合は、被害者救済が最優先に行われます。この被害者救済制度は、自動運転車の人身事故の際にも有効ですが、他人に与えた人損に限られますから、仮に自動運転のシステムの不具合によって自損事故が起きた場合、運転者の保障はありません。現在は、多くのドライバーが任意保険に加入し、自身の死傷や物損に備えていますが、自動運転車のシステムトラブルなどの可能性を考えると、それに適った自賠責保険システムをつくることが望ましいといえます。

 刑事責任に関しては、2013年に「自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律」(自動車運転処罰法)が制定されましたが、これが適用されるのは運転者に過失があった場合です。自動運転モードの車が事故を起こした場合、その責任は、車の製造メーカーやシステムのプログラム設計者などが負うことになるのではないかと思われがちですが、それは、余程の危険が予見されるにもかかわらず車やシステムを製品として出していた場合に限られます。また、Product LiabilityいわゆるPL責任を危惧する自動車業界の声がありますが、製造物責任法(PL法)を適用するには、車やシステムに「欠陥」があったことを証明する必要があります。

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