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原発本格再稼働の前に正しい議論を

明治大学 法学部 准教授 勝田 忠広

「人の命」より経済を優先させてきた日本の原発開発

 もともと軍事目的で研究が始まった核エネルギーですが、原発が開発されてきた歴史を振り返ってみると、1950年代から世界的に「平和利用」の開発がはじまり、日本も、平和利用のために核エネルギーの技術をコントロールすることは先進国としてのステータスでもあり、日本の権利でもあると、潮流に乗りました。戦後の復興、成長に電力は不可欠であり、資源の乏しい日本にとって、原発は未来を予感させる技術とも受け取られていたのです。以後、日本は独自技術を高め、原発の開発を推進してきました。その間、原発の重大事故が発生したアメリカや旧ソビエト連合がその開発スピードを落としても、日本は原発開発の歩みを止めることはありませんでした。原発は、日本にとって科学国としてのステータスでもありましたが、半面、ビジネスや産業の高度成長を優先させ、「人の命」を二の次にしてきた日本社会の象徴でもあったといえます。
 スリーマイル島の原発事故以後、アメリカでは新規原発の開発や導入にはかなり慎重になっています。原発の安全性については、近隣住民のガンのリスク分析やその低減策を明確に安全目標として定めます。科学そして科学者の根底には、科学を発展させることは、社会的な雄大な責任を伴うという認識があるのでしょう。こうした認識は、世界の先進国ではスタンダードです。
 翻って、日本はどうでしょう。福島の事故後、原子力規制委員会が発足し、原発の再稼働にあたって、従来以上の安全基準を設けて審査を行っています。しかし、その根底にあるのは、残念ながら“稼働させるため”の規制です。なお鹿児島県の川内原発の再稼働に際して、原子力規制庁が決めたのだから問題ない、と安倍首相は発言していますが、再稼働ありきの方針があり、その責任は原子力規制庁にあると感じさせるニュアンスです。これでは、福島第一原子力発電所の事故の原因が技術的な課題のみに単純化され、責任の所在が不明確になり結果として事故は教訓を生かされず風化してしまいます。

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