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犯罪や捜査を他人事ではなく、自分事として考える

 犯罪とか、捜査などは、自分とは関係のないことと思う人が多いと思います。確かに、大多数の人は、罪を犯して、捜査の対象になることはないかもしれません。でも、知らないうちに犯罪に加担しているというケースが、実は起こっているのです。

 例えば、SNSで、フォロワーにお金を配るという宣伝があります。Aさんが応募すると、当選して2万円を貰えることになりました。そこで、自分の口座番号を伝えると、200万円が振り込まれたのです。

 すると、誤って振り込んでしまったので当選金との差額を返金してもらいたいと連絡がきます。そこで、Aさんは198万円を引き出し、指定された場所に行って相手に渡します。すると、ご迷惑をかけたので、お詫びとして返金は190万円で良いと言われます。結局、Aさんは10万円貰えたことになり、喜びました。

 ところが、この相手は詐欺グループで、Aさんの口座番号をまんまと聞き出し、詐欺の被害者のBさんに振り込ませる口座として、Aさんの口座を利用していたのです。その現金を引き出して、詐欺グループに渡したのですから、Aさんは詐欺グループの仲間と見なされ、警察の捜査の対象になってしまいました。

 特に、物心がついたときから身近にインターネットがあった世代は、SNS等で発信された情報を鵜呑みにしてしまって、そのために犯罪に巻き込まれる危険も増えてしまっているように思われます。

 さらに、いま旅行に行っていることや、自分の写真などを無邪気に発信して、悪意をもった人に空き巣に入られたり、個人情報を利用されたりする危険もあります。

 そうした状況に陥ったとき、あなたは警察の対応をどう感じるでしょう。

 犯罪に関与していると見なされた場合は、違法な捜査は絶対に許せないし、違法捜査によって得た証拠を使うべきではないと思うかもしれません。逆に、被害者になった場合は、どんなことをしても犯人を処罰してほしいと思うかもしれません。

 いま、使われていない捜査の方法も、法律によって新たに使えるようになることもあり得ます。それは心強い一面もある一方、それが濫用された場合の恐れもあるわけです。

 裁判所が捜査を違法と認めつつも、証拠を排除するほどではないと判断することのある根底には、こういったさまざまな立場の間のバランスを取り、先にも述べたように、国民の信頼を保とうとしている意識があるという見方もできます。

 その意味では、マスコミなどで報道される裁判の結果に私たちが関心をもち、考えるということも重要だと思います。

 日本が安全で安心な社会であるために、捜査機関や裁判所が果たしている役割は大きいことを、私たちは日頃あまり意識しません。しかし、そうした社会を持続させていくためにも、犯罪や捜査に関する話題に関心をもつことも大切だと思います。

 そういった動きに対して、私たちは他人事と思わず、自分事として考えてみることが必要ではないでしょうか。


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※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。

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