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パンデミックによって質屋の機能が見直された!?

井上 達樹 井上 達樹 明治大学 商学部 専任講師

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昔は街中でよく見かけた質屋ですが、最近はあまり見かけなくなりました。庶民の生活を助ける質屋は、約100年前に大流行したスペインかぜのときには利用が増加したと言います。コロナによるパンデミックのいまは当時と似た状況ですが、質屋は活用されているのでしょうか。

安価な質草でもお金を貸してくれた質屋

井上 達樹 質屋という言葉は聞いたことがあっても、どういう商売なのか、詳しく知っている人は少なくなっているかもしれません。要は、お金を貸してくれる金融機関なのですが、企業への融資が中心の銀行などと違い、一般の生活者がお客の中心です。

 というと、消費者金融をイメージする人が多いと思います。しかし、大きく違うのは、消費者金融は無担保、無保証人でお金を貸しますが、質屋は担保を預かり、それに見合った額を貸すことです。質屋の場合、その担保のことを質草と言います。

 質草が必要というと、面倒くさそうに思われるかもしれませんが、逆に、それが大きなメリットになっています。

 例えば、消費者金融などからお金を借りて、期日までに返金できないと、督促を受けたり、場合によっては訴えられて、裁判になることもあります。

 しかし、質草を預けてお金を借りる質屋の場合は、返金できなければ、質流れと言い、預けた質草を取られてしまいますが、それでお終いです。督促のハガキや電話が来ることも、取り立てが来ることもありません。つまり、返金できなかったときのリスクが非常に小さいのです。

 質草という担保を預けるのですから、それは当然だろうと思われるかもしれませんが、お金を借りるための担保と言えば土地や車など、高価なものが一般的です。

 現代の質屋でも、質草となるのはブランド品や貴金属などですが、実は、以前は、衣類や日用品など、安価な品物でも質草になったのです。つまり、質屋は、本当に庶民のための金融機関であったと言えるのです。

 この質屋の仕組みは、鎌倉時代くらいからあったと言われます。特に、いわゆる、その日暮らしと言われるような貧困層にとっては、なくてはならないものでした。

 例えば、身体の具合が悪くて数日働けなかったとか、雨が降り続いて仕事ができなかったというと、そうした人たちはたちまち生活に困ってしまいます。そんなとき、安価な身の回りの品物でも質屋に持って行けば、現金を借りることができ、急場をしのぐことができたのです。

 質草が流されてしまう期限は質草によって異なります。一般的には6ヵ月ですが、短期扱いの安価な質草は3ヵ月、高価な質草の場合は1~3年の場合もありました。その間に働いてお金を貯め、利息分をつけて返金すれば、預けてあった質草は戻ってきます。

 このように身の回りの品物を元に現金にするシステムとして、現代では、リサイクル店やフリーマーケット、ネットを使ったフリマアプリなどもあります。

 しかし、そうしたシステムで売ることは、その品物を手放すことです。もちろん、それが本当に不要品であれば、それでも良いでしょう。

 一方、いま、現金が必要だけど、愛用品を売って手放したくないというときは、質屋のシステムが有効です。庶民にとって、身の回りに無駄なものや不要品などはほとんどなかった時代は、これも質屋の大きなメリットだったわけです。

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