明治大学の教授陣が社会のあらゆるテーマと向き合う、大学独自の情報発信サイト

マイナンバーの隠れたリスクに目を向けよう

村田 潔 村田 潔 明治大学 商学部 教授/ビジネス情報倫理研究所所長

本年(2016年)1月からマイナンバーの運用が始まりました。いまでも賛否両論があり、反対の大きな理由は個人情報の漏洩に対する懸念ですが、別の観点からマイナンバーのリスクを指摘する声も上がっています。

マイナンバーの利便性とリスクをあらためて考える

村田 潔 国民一人ひとりに番号を割り振り、行政の様々な分野で利用しようという議論は、佐藤栄作内閣時代の1960年代末からありましたが、それから50年近くの紆余曲折があり、ようやく運用が始まることになりました。マイナンバーの用途とメリットは、よく報道されているように、所得の捕捉をより正確にして税の徴収を公平にすること、社会保障において保険金の適正な負担と給付を行うこと、激甚災害時の個人識別に役立てること、そして、行政の効率化があげられています。私たちが役所で様々な申請などをする際、手続きが簡素化されることにもなりそうです。

 逆に、懸念されているのは情報漏洩とそれに伴う個人情報の不正利用、そして国家による個人の管理です。情報漏洩に関しては、マイナンバーには住民情報や所得情報、社会保障情報などが結び付けられているので、この番号がわかれば芋づる式にすべての個人情報がわかってしまうのではないかという懸念がありますが、政府はそれを避けるために個人情報の分散処理を行っているとしています。情報ごとに関係官庁が別々に管理し、マイナンバーと結び付く部分には数学的処理による一種の暗号がかけられているため、何かひとつの情報がわかっても、すべての情報にはたどり着けないというわけです。不正利用に関しては、他人のナンバーを使ったなりすましと、ナンバーを運用する職員の規律違反が考えられます。実際、ここ数年の間に、社内の関係者が顧客情報を持ち出す事件がたびたびありました。まず、私たち自身が自分のナンバーを他人に漏らさないことが重要であり、ナンバーを運用する組織は職員に対する管理体制をしっかり構築し、規律が緩まないように維持していくことが重要です。この問題は、マイナンバーに限ったリスクではありませんが、マイナンバーに関してはより厳格な運用が求められます。

 しかし、より深刻で,しかも対応が難しいのは、国家による個人の管理に関する問題です。

社会・ライフの関連記事

「権利」、「法」、「自由」について、私たちは誤解していないか

2021.6.21

「権利」、「法」、「自由」について、私たちは誤解していないか

  • 明治大学 法学部 特任教授
  • 森際 康友
違憲判決を社会に活かすために必要なのは

2021.6.16

違憲判決を社会に活かすために必要なのは

  • 明治大学 法学部 准教授
  • 辻 雄一郎
人と機械の関わり方から、人と人のコミュニケーションを考える

2021.6.9

人と機械の関わり方から、人と人のコミュニケーションを考える

  • 明治大学 総合数理学部 教授
  • 小林 稔
再生可能エネルギーを当たり前にするために必要なこと

2021.6.2

再生可能エネルギーを当たり前にするために必要なこと

  • 明治大学 総合数理学部 准教授
  • 浦野 昌一
少子高齢化ではない、少子超高齢に突入した日本社会の危機

2021.5.26

少子高齢化ではない、少子超高齢に突入した日本社会の危機

  • 明治大学 専門職大学院 ガバナンス研究科 教授
  • 加藤 竜太

新着記事

2021.06.21

「権利」、「法」、「自由」について、私たちは誤解していないか

2021.06.17

受け取った“想い”を、次世代へつないでいこう

2021.06.16

違憲判決を社会に活かすために必要なのは

2021.06.10

今日の経験を、未来の自分に活かす生き方をしよう

2021.06.09

人と機械の関わり方から、人と人のコミュニケーションを考える

人気記事ランキング

1

2021.06.16

違憲判決を社会に活かすために必要なのは

2

2020.04.01

歴史を紐解くと見えてくる、台湾の親日の複雑な思い

3

2017.10.18

ゲーテッド・コミュニティの実態に迫り、その“可能性”を探る

4

2019.07.31

万葉集に由来する「令和」に込められた、時代にふさわしい願い

5

2017.10.04

精神鑑定は犯人救済のために行うのではない

リレーコラム