明治大学の教授陣が社会のあらゆるテーマと向き合う、大学独自の情報発信サイト

マイナンバーの隠れたリスクに目を向けよう

明治大学 商学部 教授/ビジネス情報倫理研究所所長 村田 潔

注視すべきなのは今後のファンクション・クリープ

 当初政府は、マイナンバーの用途は、税、社会保障、激甚災害対応に限るといっていましたが、すでに、用途を拡大することが公表されています。例えば、マイナンバーを医療情報に結びつけると、治療に役立てられるだけでなく、親や親類、さらには祖先の医療情報を一括して精査することが容易になり、罹りやすい病気の傾向を把握することで、個人ごとにオーダーメードした予防医療に役立てることができます。用途を拡大するときは、このようにメリットのみが喧伝されたり、または、目立たないように公表するケースもあります。情報システムに当初目的とした以外の用途を徐々に追加していくことをファンクション・クリープ(function creep)といい、特にプライバシー侵害が懸念されるマイナンバー・システムの場合、新たな機能の追加や用途の拡大に注意を払うことが重要です。

 日本人は、プライバシーというと個人情報や家庭生活のことと捉えがちです。しかし、プライバシーにはさまざまなものが含まれます。たとえば、夫婦が子どもを持つか持たないかの判断は生殖権(reproductive rights)に関わるものであり、個人的な決定に関するプライバシー(デシショナル・プライバシー(decisional privacy))に属する問題です。予防医療によって食事内容を指示することは、自分の心身をどのような状態に置くのかを自ら決定するデシショナル・プライバシーの侵害にあたることも考えられるのです。海外のプライバシー研究者たちは、ファンクション・クリープによる個人の自由の制約を問題視し、これをどうコントロールするかを議論しています。しかし、日本ではこうした議論はほとんどされていません。

社会・ライフの関連記事

集中豪雨を防ぐためには、法整備が必要!?

2018.10.10

集中豪雨を防ぐためには、法整備が必要!?

  • 明治大学 法学部 教授
  • 柳 憲一郎
「司法取引」で名前を出されただけで逮捕されることもある

2018.9.19

「司法取引」で名前を出されただけで逮捕されることもある

  • 明治大学 法学部 教授
  • 山田 道郎
日本は、女性の政治参画「後進国」から脱却できるか

2018.9.12

日本は、女性の政治参画「後進国」から脱却できるか

  • 明治大学 政治経済学部 准教授
  • 木寺 元
ゲームで一人勝ちは楽しくないことを、実は、みんな知っている

2018.9.5

ゲームで一人勝ちは楽しくないことを、実は、みんな知っている

  • 明治大学 野生の科学研究所 所長
  • 中沢 新一
民主主義と軍事主義。果たして共存は可能か?

2018.7.11

民主主義と軍事主義。果たして共存は可能か?

  • 明治大学 研究・知財戦略機構 特任教授
  • 纐纈 厚

Meiji.netとは

新聞広告連動企画

新着記事

2018.10.10

集中豪雨を防ぐためには、法整備が必要!?

2018.10.03

「年老いていく」日本に対して、アフリカは世界で「一番若い大陸」

2018.09.26

子どもを語学の天才にするために、大人は工夫の天才になろう

2018.09.19

「司法取引」で名前を出されただけで逮捕されることもある

2018.09.12

日本は、女性の政治参画「後進国」から脱却できるか

人気記事ランキング

1

2017.03.15

「沖縄振興予算」という呼称が、誤解を招いている

2

2018.10.10

集中豪雨を防ぐためには、法整備が必要!?

3

2014.09.01

緊急提言、人口減少社会に歯止めをかける ―方策は少子化対策、社会…

4

2017.03.29

「留学生30万人計画」が抱えている将来的課題とは

5

2018.05.23

衰える結婚、止まらぬ無子化 ――このままでは日本の未来が失われる

Meiji.net注目キーワード

【注目!】連載コラム