Meiji.net

2022.11.30

パンデミックによって質屋の機能が見直された!?

  • Share

質屋の機能は廃れない?

 近年、質屋は減少しています。ひとつには、様々な社会保障制度が整備され、貧困層に寄り添う金融機関という質屋の機能の価値が相対的に下がったからかもしれません。公益質屋が2000年に廃止になったことは、その象徴的な現れと言えると思います。

 また、現代の質屋は、ブランド品や貴金属などを質草にしているので、客層は中流以上に移っていると言えます。

 質草が高価なものになったのは、安価な日用品などの中古市場が縮小したことも要因です。昔は、衣服が質流れになっても、古着の大きな市場があり、質屋は商売が成り立ったのです。

 その意味では、買って捨てるを繰り返す大量消費社会が、質屋という仕組みを変えていったと言えます。

 スペインかぜのパンデミックと、現代のコロナによるパンデミックは、やはり、似たような状況を生んでいます。

 突然の災害による生活の急変に対して、100年前は質屋が果たした役割は大きいものがありましたが、現代のコロナ禍ではどうなのかというと、私の知る限りでは、質屋が大きく貢献したということはあまりないと思います。

 それは、先に述べたように社会保障が充実してきたことと、質屋が扱う質草が変わってきたことがあると思います。

 それでも、質屋の機能自体が変わっているわけではありません。

 ある新聞報道によると、ある飲食店の女性オーナーは、休業などに対する東京都からの協力金の支給が遅く、月末の家賃などの支払いに間に合わず、成人式の振り袖や時計、バッグなどを質屋やフリーマーケットに出すなどして急場をしのいだ、ということです。

 つまり、社会保障制度があっても、必要なときに現金がなければ、やはり困ってしまうのです。そんなときに、自分の持ち物をすぐに現金にできる質屋などは有効です。

 さらに、思い出の振り袖を手放してしまうのではなく、お金ができたときに自分の手元に戻せるメリットも大きいと思います。やはり、質屋の機能は廃れないと言えるのかもしれません。

 近年は、インターネットによるフリマアプリなどが盛んになり、不要になった品物を売ることができる環境ができてきています。

 これは、質屋のライバルと思われそうですが、むしろ、フリマアプリによって安価な品物の中古市場が確立すると、質屋にとっては、また安価な質草を扱うことができる可能性が出てくるのではないかとも思います。

 そのとき、どんな人たちが、どんな理由で質屋を利用するのか、それもまた、ウォッチしていきたいと考えています。


英語版はこちら

※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。

  • Share

あわせて読みたい