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“夕張ショック”はもはや過去の出来事か ―新たな財政危機と市民参加の展開―

兼村 髙文 兼村 髙文 明治大学 専門職大学院ガバナンス研究科 教授(2021年3月退任)

“夕張ショック”から学んだ財政破綻の回避

兼村髙文教授 私の専門は地方財政論であるが、地方財政に関する問題で昨今の出来事を振り返ると、最も痛ましいことは2007年3月に北海道夕張市が財政破綻した”夕張ショック”である。日本では自治体の破綻は制度上ありえないが、年間40億円程度の予算(標準財政規模)に対し350億円もの赤字を計上したのであるから、事実上の破綻である。それ以降、夕張市民はこの赤字を返済するために、全国で最高の負担と最低のサービスを向こう18年もの長期にわたって強いられることになったのである。
破綻から7年が経過した今、転居できる市民たちは去ってしまい、残っているのは転居したくてもできない高齢者たちである。炭鉱でにぎわっていたピーク時に12万人を数えた市民は今、1万人にも満たない。市の再興のためとはいえ、巨額の借入を決めた当時の市長とそれをチェックできなかった議会の責任は大きい。
政府はこうした事件も参考にしながら、自治体の財政破綻を未然に防ぐ新たな制度として「自治体財政健全化法」を制定し2009年4月から施行している。以前は自治体の一般会計に限られていた赤字のチェックを特別会計や第三セクター等の外郭団体も含め連結し、また赤字のみならず借金の総額も連結して公表することを全自治体に義務付けた。さらに議会にも財政健全化に関して一定の責任を負わせた。問題の解決は夕張市民の犠牲も伴いながら図られたのであるが、残された市民に課せられた負担はあまりにも大きいと言わざるをえない。

財政健全化が進む一方でインフラ老朽化の危機

 「自治体財政健全化法」は自治体の財政を急速に健全化させてきた。同法が施行されてこれまで財政再生団体(破綻状態で通称レッドカード)と早期健全化団体(健全化を要する状態でイエローカード)の数は、レッドカードは夕張市のみであり、イエローカードは当初の43団体であったが直近では2団体まで減った。ほとんどが健全団体である。健全化を進めたのは、人件費の削減も大きいが公共事業費のカットが借金(地方債)を減らしてきた。
“夕張ショック”の教訓は財政健全化に大いに貢献してきたが、ここで別の問題が浮上しつつある。それは健全化が公共事業のカットで進められた結果として、インフラ整備が滞ってきたことである。わが国のインフラは戦後の高度成長期に整備されてきた。1964年の東京オリンピックに向けて交通インフラは集中的に建設された。半世紀が経過し、耐用年数が来ている。橋梁や下水道等の危険個所の調査が行われているが、老朽化したインフラの更新投資は待ったなしである。財政健全化が必要なサービスのカットで計上されているとしたら、その結果としてつぎは生命の危機を招きかねないことになる。

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