
2022.07.07
明治大学の教授陣が社会のあらゆるテーマと向き合う、大学独自の情報発信サイト
現代は「ガバナンス」の時代であるといわれる。ガバナンスという言葉は「統治」や「運営」といった意味であるが、国際開発援助の分野では、世界銀行によって比較的早くからガバナンスの概念が使われてきた。各国政府と国際機関、国際NGOとの協調をめざすグローバル・ガバナンス論に見られるように、さまざまなアクターとのパートナーシップの重要性が示されてきた。これはグローバリゼーションがもたらした経済的発展の一方で、所得格差や環境破壊といった、一つの国だけでは解決できないグローバル・イシュー(地球的課題)が顕在化してきたためである。不可逆的な現象であるグローバリゼーションは、グローバルかつローカルな多次元で進行している。国家の統治能力が相対的に低下する中で、一つの国の中の社会課題を解決するにあたっても、政府、企業や市民社会とのパートナーシップによる協働のガバナンスが求められている。
協働とは、異なる役割を持つアクターが、同じ目標に向かって、同じベクトルをもって働いていくことである。「政府」、「企業(経済)」、「市民社会」という3つのアクターは、それぞれ考え方や立場も違う。さらに、グローバリゼーションが進展するなかで、価値も多元化している。多元的な価値のなかで、一つの目標に向かうのは簡単なことではない。そのためには、多様な人が集まって意見を形成していく「討議の場」をもつことが必要になる。