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“夕張ショック”はもはや過去の出来事か ―新たな財政危機と市民参加の展開―

兼村 髙文 兼村 髙文 明治大学 専門職大学院ガバナンス研究科 教授(2021年3月退任)

新たな財政危機の発生:英国バーミンガム市の財政破綻騒動

 さて”夕張ショック”にみる財政破綻は、米国のデトロイト市が2013年7月に連邦破産法9条の適用を受けて経営破綻(制度上の破綻)したのと同様に、その発生は極めて人為的であり予見可能ともいえる。しかし、つぎに紹介するのは人為的であっても発生の予見が難しいケースである。今後、わが国でも起きる可能性があるので紹介したい。
2012年11月12日朝の英国BBCニュースは、”バーミンガム市破綻”というショッキングなタイトルで始まった。英国も自治体の破綻は制度上ありえないが、バーミンガム市が”破綻”とされた原因は、市の元女性パート職員が男性との差別的賃金を不服として差額の支払を市に求めて争ってきた裁判で、最終的に最高裁で市側が敗訴し、少なくとも2014年1月時点で約1,100億円に上る賠償金の支払いが確定したことによる”破綻”である。市の年間予算は約3600億円程度であるから、その支払いは予算の3割近くにもなる。さらに今後、賠償金は増える可能性がある。この類の支払いに借金(起債)が認められていない英国では、市の資産を売却して捻出するしかない。昨年からすでに公会堂など売りに出されている。
公務員の雇用条件が英国とは異なる日本で、バーミンガム市のケースがそのまま当てはまることはない。しかし、わが国でも最近、多様な雇用形態が採用されるようになっている。正規・非正規の雇用条件をめぐる扱いなどで公務員にも差別的賃金問題が生じ、思わぬ債務が生じる可能性はゼロではない。今後、自治体の財政危機は、予見できない事態を含め様々な観点から見通していくことが求められている。

財政の問題は市民参加で解決するのが基本

 現在、私が力を注いでいる研究は、「市民参加予算」でありその導入である。「市民参加予算」とはその名が示すように、市民が予算編成に直接参加するものである。近年、地方選挙の投票率は下がり続け、首長の三選、四選や無投票当選もある。これは、議会民主制の危機ともいえる。この状況が続けば、成熟した市民社会の形成は成しえない。「市民参加予算」は、市民の政治への関心を促し、政治との対話を進めながら市民の意見を予算に反映させる取り組みであり、議会民主制を補完するものである。議会政治と市民政治のいわば橋渡しでもある。
この取り組みは、1989年にブラジルのポルトアレグレ市で始まりその成果が評判になり世界に広まってきたのであるが、各国でそれぞれの状況に合わせながら、広く市民参加型の意思決定の取り組みとして行われている。具体的には、公共事業計画に市民の意見を取り入れて決定したり、公営住宅の共用部分の予算使途を市民が決めたり、あるいは緊縮財政で歳出カットのメニューを市民が投票で決めるなど、さまざまである。わが国も市民参加の取り組みを広く捉えれば、市川市などのいわゆる「1%支援制度」や藤沢市の「地域経営会議」などがあるが、「市民参加予算」と銘打った制度はまだない。

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