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サステイナブルな社会になるために必要な「評価」とは?

源 由理子 源 由理子 明治大学 専門職大学院 ガバナンス研究科 教授

日本社会に「対話」を取り戻すために

 そもそも、対話とは、異なる意見がないと成り立ちません。同じ意見同士のお喋りは楽しいですが、そこからなにか新しいものを生み出すことは難しいでしょう。

 様々な意見や知見、実践知を出し合う対話によって、初めて、そこから新しいものを生み出すことができるのです。

 ところが、日本社会は、なかなか本音や異なる意見を出しにくい環境です。それは、対立することをできるだけ避け、長いものに巻かれる、という文化があるからかもしれません。しかし、それでは社会課題を解決する新しい動きを起こすことは難しいでしょう。

 対話の場は参加したそれぞれの人たちの主観を客観化していくプラットフォームであり、事業の新たな価値を生み出す場です。それによってもたらされる社会の変革は、データや暗黙知といった既存の知を、新たな人間同士の関係性によって新しい価値につなげていくという知の創造の場でもあります。

 私たちは多様で複雑な社会課題の前に一度立ち止まり、時間はかかっても、様々な意見や視点、実践知、暗黙知を持った人たちと対話することで、私たちはなにができるのか、どんな価値を創出していくのかを考える必要があると思います。それが、私たちの社会を持続性のあるものにしていくのです。

 サステナビリティとか社会課題解決などというと、それは身近な問題ではなく、自分には関係のないことのように思う人もいるでしょう。

 では、子どもの貧困問題や環境問題などのニュースに接したら、なぜ、そのようなことが起きているのかと、一度、考えてみてください。

 大人になると、聞き流しがちになる様々なことに、子どものように、なぜ、なぜ、と問いかけるのです。そして自分なりに考えてみることは、立場の異なる人たちに対する共感力を高めることに繋がると思います。

 すると、対話の幅が広がり、相互の学び合いといくばくかの妥協をとおして何らかの合意点をさぐる行為につながっていくはずです。異なる意見を持った人を尊重し、聞く耳を持つことで、自分の考えがさらに広がっていく、そんな対話を楽しむ文化が必要ではないでしょうか。

 対話は、まず、自分自身で、なぜ、と考えることから始まると思います。「問いかけること」は評価の基本です。この取組でいいのだろうか、私たちがめざす社会価値を生み出しているのだろうか、そうでないとしたらどのような改善が必要なのだろうか、と問い続けることが、サステイナブルな社会―それは到達点ではなく持続可能な状態を追い続ける動的な社会―につながるのではないでしょうか。

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※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。

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