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人は植物と共に生きている、いや、人は植物に生かされている

川上 直人 川上 直人 明治大学 農学部 教授

いま、二酸化炭素の排出を抑えることが世界各国の課題になっています。そのためには、人工的にできることや、人の取り組みも必要ですが、実は、植物の能力を利用することが重要であり、大切だといいます。しかし、人は、植物の仕組みを、まだ、ほとんど知らないのです。

植物が生み出した地球の好環境

川上 直人 大気中の二酸化炭素は、いわゆる温室効果ガスとなるため、それが増えることによって地球の温暖化は進むと考えられています。

 そのため、人が排出する二酸化炭素を抑制しようという取り組みが世界中で進められています。その中で注目したいのが植物の働きや機能です。

 皆さんもご存じのように植物は光合成を行っています。それは、水と二酸化炭素を取り込み、光エネルギーを利用して体内に炭素を固定化し、酸素を排出することです。実は、植物のこの機能が、地球を、これほどたくさんの生き物が生まれ、生きることができる環境にしてきたのです。

 原始の地球の環境は、大気に酸素はほとんどなく、地上は非常に暑く、海にようやく生まれた生命も本当に微々たる存在でした。

 しかし、およそ35億年前に光合成を行う生物が誕生し、それが大繁殖し始めたのです。その結果、大気中の二酸化炭素が減って酸素が増え、気温も下がっていきました。すると、地球上には様々な生命が誕生するようになったのです。

 その後、生命にとって、地球の大気の成分のバランスは、まったく驚くような絶妙さが保たれてきたと言えます。

 植物は死ぬと、体内に炭素を固定したまま地中に積み重なっていきます。数億年の時間をかけて積み重なったその植物の遺骸を、いま、人は石炭や石油として掘り出し、燃焼することでエネルギーとして利用しているわけです。

 つまり、植物が固定した炭素を、人が燃焼して大気に放出することで、そもそも植物がもたらした地球の大気の絶妙なバランスを崩してきたわけです。それが、いま、地球温暖化に繋がっているのです。

 地球温暖化の影響として、極地の氷が溶けて海水面が上昇し、人が暮らせる環境が変わるなどということがよく言われますが、最も大きな影響は、様々な生物が絶滅してしまう可能性があることです。

 例えば、温暖化によって桜の開花時期が早まっていることがよく報道されますが、一方で、開花や発芽が遅れたり、しなくなる植物が増えているのです。

 植物が発芽しなくなると、食物連鎖を考えればわかるように、多くの生き物が生きられなくなります。人は、生き物の中で、実は、弱い存在です。食料となる生き物が減っていけば、やはり、生き延びられません。

 近年、持続可能な世界を考えようという関心が高まっています。ところが、多様な生物の持続の基礎ともいえる植物について、その生きる仕組みの多くを、私たちは、まだ、わかっていないのです。

 この地球上の生き物や私たち自身が生き残ってゆくためにも、私たちは、植物についてもっと知る必要があるのです。

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