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パンデミックを人類史と政治から見ると、見えてくるのは…

重田 園江 重田 園江 明治大学 政治経済学部教授

新型コロナウイルスが世界中に蔓延し、パンデミックを起こした原因を考えるためには、医学の見地からだけでなく、社会的な視点から見る必要があると言われます。そうした捉え方は、これからの世界や社会のあり方を考えることにも繋がっていきます。

次々と起こるパンデミックの背景にあるもの

重田 園江 未知の病原菌によるパンデミックは、ペストや天然痘、コレラなど、人類の歴史に何度も見られます。

 しかし、21世紀に入ってからわずか20年ほどの間に、SARS、豚インフルエンザ、MERS、エボラ、ジカ、デング、そしてコロナと、新しい感染症が次々と現れました。このようなことは、かつてはありませんでした。なぜ、こんなことになったのでしょう。

 ひとつには、世界の人口があまりにも増え、それを養うために、農業など食産業が大きく変わったことがあります。

 例えば、畜産業を考えた場合、かつては、自分たちの村落や部族が食べていけるだけの数の家畜を、自然の中で放牧していたわけです。しかし、現代の畜産業はそんな悠長なことは言っていられず、豚や牛、鳥などは管理しやすい屋内中心に、ギュウギュウ詰めで飼育されています。

 もちろん、病気に罹らないように抗生物質などの薬剤が与えられますが、それに耐性を持つ強力な変異種が発生することもあります。すると、飼育環境のせいであっという間に集団感染になってしまうのです。

 それが、家畜から人に伝染することもあります。実際、2009年に、豚由来のインフルエンザが人に伝染し、世界的なパンデミックが起こりました。

 さらに、農地を広げるために開墾が進み、自然環境のバランスが崩れることもあります。

 アフリカやラテンアメリカでアボカド栽培のために開墾が進み、象などの住処が失われたり、衛星写真でわかるほど森林面積が減少したり、という報道を目にします。実はそのとき、森林の奥深くに棲んでいた菌やウイルスが解き放たれることもあるのです。

 そうした未知の菌やウイルスは、グローバル化が進み、モノと人の往来が激しい現代では、動植物や人を通じて、瞬く間に世界中に広まることになるのです。

 つまり、食産業の巨大化によって畜産が変容したり、開墾などによって自然環境に大きな変化がもたらされたことが、新たな感染症が起こるきっかけになっていると考えられるのです。そして、グローバル化の進展が、その感染症を世界的パンデミックにしてしまうのです。

 しかも、食産業の巨大化とグローバル化は密接な関係があります。すなわち、1990年代に冷戦が終結した結果、自由貿易がものすごい勢いで推進され、一気に世界中に広がりました。これは「自由と民主主義の勝利」とされましたが、実は民主主義はそれほど広がりませんでした。

 それとともに、「自由な市場」という価値が絶対的なものになっていくのです。それによって、効率的に大量生産し、大量販売することが良しとされました。それが、儲かることに繋がるからです。

 巨大市場においては、多様なものを少量ずつ作るより、単一のものを大量に短時間で作る方が効果的です。そのため、従来は工業製品の生産で用いられた方式が、食産業にも用いられるようになります。つまり、食産業の工業化です。

 こうして、広大な農地で同一の農産物を大量栽培したり、多くの家畜を集めて高栄養化された餌を大量に与えて早く太らせ、どんどん出荷することになっていったのです。

 1990年代から加速したこうした動きが、21世紀に入り、新たなパンデミックを次々に引き起こす要因になっていると考えられます。

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