少子超高齢で社会は四面楚歌状態
つまり、早急になんらかの対策を立てていかないと、将来の人たちは大変なことになってしまいます。
例えば、生産年齢人口の減少を補う対策として、海外の労働者の受け入れが考えられます。実は、経済企画庁(内閣府)などは、かなり以前から移民を選択肢として考えていました。
しかし、一方で、移民の増加は犯罪の増加や社会的不安定に繋がるとして、反対意見が根強くあります。
また、安倍政権時代に盛んに議論されたのは、女性を労働市場に入れることです。それによってGDPが10%くらい上がるとも言われました。
しかし、私たちがきちんとした根拠に基づいて計算したところ、1%にも届かない可能性が高いことが分かりました。
原因は、賃金格差です。まず、男性と女性の間でギャップがあります。さらに、近年では正規と非正規の賃金格差が顕著です。女性の場合、出産で仕事から離れ、出産後に職場復帰すると、キャリアを維持していた女性との間でもギャップが生まれるのです。この結果、女性は出産によって仕事から離れることを躊躇うようになり、それが少子化に繋がるという悪循環に陥ります。
AIやロボットによって生産性を高めるという議論もあります。確かに、技術進歩には期待したいのですが、残念なことに、日本の技術進歩は世界から見ると、かなり遅れていると指摘されています。
実際、IMF(国際通貨基金)などの国際機関は、技術革新が遅れている日本は、国力が急激に転がり落ちるだろう、と指摘しています。
では、このような四面楚歌の状態の中では、有効な対策はないのかといえば、できるのは、大幅な財政支出カットだと考えられます。
つまり、年金などの現在の社会保障制度を維持するためには、そのほかの支出を大幅に抑えるのです。
例えば、高齢者が最低限の暮らしができるような年金を維持したり、現役世代が働く意欲を失うような高額の保険料にならないようにしたり。
また、子どもの養育費の補填や、出産後に職場復帰する女性をサポートする企業に対する補助など、様々な別な政策も同時に実施することも考えられます。
そのために、例えば、消費税を上げる必要があるというなら、国民のコンセンサスも得られやすくなるでしょう。
※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。