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人口変動と人びとの歴史を結わえること

明治大学 政治経済学部 専任講師 中島 満大

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近年、日本では少子高齢化が急速に進むとともに、人口減少が進み始めたことで、人口問題に関心を向ける人が増えています。確かに、人口減少に対処する方法や、人口が少ない社会での生き方を議論することも大切ですが、一方で、歴史人口学によってミクロの視点から見ると、人口の変動から別のことも見えてきます。

人口変動の歴史から、その背景にあるものを捉える

中島 満大 人口学では、文字通り、人口変動を出生、死亡、移動、結婚といった要因から考えていきます。そして人口というと、数値で表されるため、ただ増えたとか減ったという見方をすると思われがちです。

 でもその増減には、要因や背景となる構造があります。それに目を向けると、一人一人の生き方や、その地域の文化や社会構造が見えてくることがあります。

 性別・年齢別に人口を並べた人口ピラミッドを見たことがある人は多いと思います。人口ピラミッドには、歴史上の大きな出来事、例えば、戦争や災害の痕跡が残ることがあります。

 それ以外にも、日本では1966年生まれの年齢のところがくぼんでいます。なぜかと言うと、その年が丙午だったからです。丙午の年に生まれた女性は気性が荒く、夫を早死にさせるというような俗信があり、この年の出生数は少なくなっています。

 このように人口は、私たちの行動や社会現象を反映しています。あるいは私たちの日頃の行動が人口や出生、そして死亡に影響を与えていると言ってもよいと思います。

 丙午の年(1966年)の合計(特殊)出生率は1.58でした。ところが俗信によって一時的に急落した出生率を、1990年には下回ります。いわゆる1.57ショックと呼ばれる出来事です。このことをきっかけに政府は少子化を喫緊の課題として捉えることになります。

 でも、日本の少子化が始まったのは、1990年からではありません。合計(特殊)出生率が、子ども世代の人口が親の世代の人口と同じ規模になるために必要な水準(人口置換水準)を断続的に下回ったのは、1970年代後半からです。

 1970年代後半から続く出生率の低下にもかかわらず、過去の高出生率や低死亡率のおかげで、当時の日本社会は、働き手が多く、相対的に彼(女)らが支える子どもや高齢者が少ない状態、いわゆる人口ボーナス期にありました。その追い風に乗って、経済活動も展開してきました。

 ただし現在の日本社会は、人口減少の時代に突入しています。人口ボーナス期とは反対に、過去の低出生率の影響により、たとえ、2021年の合計出生率が2.5と急激に上昇したとしても、人口減少は続いていきます。

 つまり人口は私たちが暮らす社会を制約する条件にもなるのです。過去の私たちの行動の蓄積が人口学的条件となり、現在、そして将来の社会に影響をもたらします。

 人口は、数字で無味乾燥といったイメージをもつ人もいるかもしれません。しかし、数値化する前には、一人一人の生活や人生があったことを忘れてはいけません。

 そのことを私が意識するようになったのは、私が人口学の中でも歴史人口学を専門とするようになってからです。歴史人口学では、地域に暮らす人々の出生や死亡の記録から、教科書には載らないような庶民の歴史に焦点をあてることが多いのです。

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