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2019.10.16

増える、ひとり暮らしの高齢者が楽しい生活をおくるには

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人と人との信頼関係や結びつきをもつことが大切

岡部 卓 また、かつては日本の社会保障の一端を担っていた「地域」でも、新たな取り組みが始まっています。それが「地域共生社会」構想です。

 厚労省は、「地域住民や地域の多様な主体が参画し、人と人、人と資源が世代や分野を超えてつながることで、住民一人ひとりの暮らしと生きがい、地域をともに創っていく社会を目指す」と提案し、そこに高齢者の介護を含めた支え合いの仕組みを構築していこうとしています。

 期待のかかる取り組みですが、注意しなければいけないのは、かつての地域コミュニティは同調圧力が非常に強かったことです。地域の人たちと同調できない人は、いわゆる村八分(排除)にされ、支援もなにも受けられなくなりました。

 差異や多様性を尊重した、新しい形の地域コミュニティを創っていくことができれば、それは、新たな互助へと発展していくと思います。

 いま、日本が目指している社会保障制度は、公助(租税)を中心にするとか、共助(社会保険)を中心にするということは難しく、保守型と自由主義型の中間で、そこに家族と地域の支援をプラスするという形です。様々な支え合いを組み合わせていくことが考えられているのです。

 その意味で、私たち自身ができることはなんでしょうか。いま、働き盛りの人に心がけて欲しいのは、健康でいることです。

 健康であれば、65歳を過ぎても働くことができます。働くことは、もちろん収入を得ることですが、さらに、社会との接点をもつことでもあります。それは、「地域共生社会」でも目指しているとおり、個人にとっても社会にとっても非常に重要なことです。

 さらに言えば、働くことだけでなく、趣味や個人的な活動でも良いでしょう。働く、憩う、集う、そういう場を、働き盛りのいまからつくっていくことを考えてください。

 それは社会や地域において、人と人との信頼関係や結びつきをもつ、社会関係資本(ソーシャル・キャピタル)です。それは決してキャッシュ(現金)ではありませんが、その関係や繋がりによる支え合いに価値があるのです。

 老後の資金は2000万円必要という発表がありましたが、もちろん、それも大切ですが、まず健康で、そして社会的な繋がりをより多くもつことができれば、それは、キャッシュに勝る価値でもあります。

 その意味では、健康でいることがなによりの自助であり、それが互助や共助に繋がっていくのです。さらに、公助が担保されているという環境であれば、高齢のひとり暮らしでも、意外と楽しむことができるのではないでしょうか。

>>英語版はこちら(English)

※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。

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