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増える、ひとり暮らしの高齢者が楽しい生活をおくるには

岡部 卓 岡部 卓 明治大学 専門職大学院 ガバナンス研究科 教授

介護保険をより充実させることが必要

 国もこうした状況を受け、家族介護に頼らない社会保険制度として、2000年に介護保険制度を施行しました。これにより、加入者は一部自己負担はあるものの、ホームヘルパーや介護施設などの介護サービスの給付を受けられるようになったのです。

 高齢者介護において、家族を前提としない仕組み、すなわち介護の社会化が整えられてきたと言えます。

 しかし、それとともに様々な問題も出てきました。

 介護サービスの提供は民間の参入に頼るところが大きいのですが、利益優先にはしる事業者が不正を起こし、必要な規制をどう行っていくかが課題となりました。

 また、介護施設で働く介護労働者の労働条件が非常に悪いことも問題になっています。

 そもそも、在宅介護を進めたときも、労働の主体は女性で、対価の払われないシャドーワークと見なされました。

 当時も、女性に負担を強いているとして問題とされましたが、まるで、その延長のように、現在の介護労働者の待遇も悪く、犠牲的精神を強いられています。

 介護サービスは対人サービスになるため、マンパワーを充実させることは重要です。まず、介護労働者の給与を引き上げ、労働条件を整えることが急務であると思います。

 しかし、その場合に財源が問題となります。現在の介護保険では、介護労働者の人件費を上げていくことは、おそらく難しいでしょう。

 そもそも、日本の高齢化は急激に進んでいます。国連の基準では、高齢化率(65歳以上人口が総人口に占める割合)14%で高齢社会、21%を超えると超高齢社会と位置づけられていますが、日本は2007年に21%を超え、現在は27%を超えていると言われます。

 その背景には少子化があります。生まれてくる子どもが少ないため、相対的に高齢者の割合が増えているのです。このままでは、2050年には、20~64歳の1.2人で、1人の65歳以上を支えることになると言われています。

 これでは、介護保険の仕組みで膨らむ費用をまかなうためには、保険料を相当上げなくてはならないことになってしまいます。

 そこで、保険料を上げるだけではなく、相当に税を投入することも考える必要があります。例えば、消費税の使い途をより明確にし、介護保険に投入の合意形成を進めていく必要があります。

 ただし、消費税は逆進性があるので、低所得者に対するなんらかの給付を考えなければなりません。税と社会保障は、所得の再分配機能をもっています。そのことを視野に議論を進めることが必要です。

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