知的財産保護の国際的なルールのTRIPS
私たちの身のまわりを見回すと、知的財産が用いられた様々な商品に囲まれていることがわかります。
まず、私たちが商品を識別するのは、商品のパッケージの意匠や商標、いわゆるブランドによってですし、その商品の仕組みや品質には様々な特許が用いられていたりします。
しかし、それが人気のある商品であると、それを模倣する商品、いわゆる模倣品も出てくることがあります。
知的財産の侵害は、なぜ問題となるのか。大きく分けて2つの点があります。
ひとつは、その商品の発案、開発、品質の維持管理に多大な費用や労力を使っている企業にとって、模倣品が出回ることは、経済的な損害になることです。
そして、もうひとつが、需要者すなわち、ユーザーにとって損害が出ることです。最近では、模倣品により、健康被害に遭うことや命の危険に繋がることもあります。
例えば、食品などの模倣品の場合、低品質な模倣品は健康問題に繋がる恐れがあります。自動車部品の模倣品の場合、性能が悪いと事故に繋がりかねません。オフィスのコピー機のトナーが模倣品の場合、燃えて火を出したケースもあります。
私たちはそのような模倣品を購入しなければ良いのですが、外国では、商品を扱う代理店でも見抜けず、模倣品が正規品に紛れ込んで売られていることもあるとされています。
これを購入してしまい、なんらかの事故が起こると、ユーザーにとっては重大な被害になる可能性があり、正規の企業にとっては、信用の低下に繋がりかねません。
そこで、WTO(世界貿易機関)はTRIPS協定をつくり、国際的に知的財産の保護を行っています。
その内容は大きく分けて3つあります。まず、TRIPS協定を締結した国は、最低限の保護レベルの知的財産法を整備することが求められます。保護レベルは、非常に高く、途上国も先進国並みの保護を行うことが求められました。
次に、知的財産権を行使する際の仕組み、権利行使の実効性を確保する司法制度の確立です。しかし、司法制度自体が国によってまちまちであるため、最低限のミニマムなルールが規定されています。
そして、こうした制度やルールを運用するための人材の育成です。
発展途上国などの場合、知的財産制度を構築することが困難な場合が多く、日本は、それを支援する活動を行っています。私も2013年から、ミャンマーの知的財産制度の整備の支援活動に関わっています。
※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。