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令和元年にあらためて思う、日本人は元号が好きだ

加藤 徹 加藤 徹 明治大学 法学部 教授

2019年5月1日、新天皇の即位にともない、元号も令和に改元されました。改元にあたっては、元号制度を廃止して西暦に統一するべきだという意見も多く聞かれました。日本人は西暦を合理的とする一方、なぜ、元号も使い続けるのか。様々な考察や議論がありますが、実は、日本人は元号が好きだから、だといいます。

日本人は元号的なものが好き

加藤 徹 日本人が元号を使い続けるのは、一言でいえば、「元号的なもの」が好きだからです。

 元号は、中国で、紀元前2世紀の漢の武帝の時代から使われるようになりました。日本がその制度を取り入れたのは、大和時代の645年、大化からです。

 ここで注目したいのは、日本は、中国の制度や文化からなんでも取り入れたわけではないし、取り入れたものの根づかなかったものもたくさんあることです。万里の長城や、宦官、科挙の試験などは中国の特徴的な制度ですが、日本では普及しませんでした。

 一方、元号をはじめ、干支、尺貫法など、今日まで使われ続けているものもあります。しかも、元号は法律で定められていますが、干支は法律上の定めはないし、尺貫法に至っては法律で禁止されています。にもかかわらず、建物の間取りを表すとき、一般に、四畳半とか六畳という表記が使われます。おそらく、部屋の広さを○平方メートルと表されても、私たちはピンとこないでしょう。

 また、ごはんを炊くときは三合、四合ですし、日本酒も一升とか、一合、二合といいます。もちろん、メートルやグラムは合理的で、多くの場合、そちらを使いますが、日本人の身体感覚になじんでいたり、日常生活のフィット感がある単位を日本人は好み、それらを違和感なく併用しているのです。

 同じことが、元号にも当てはまると思います。合理的なのは西暦なのですが、元号のフィット感を私たち日本人は好んでいて、だから西暦と併用するのです。

 例えば、日本にはもうひとつ、皇紀という暦があります。初代天皇である神武天皇が即位した年を元年とする紀年法ですが、こちらは、近年ではほとんど使われません。戦前、戦中に右翼や軍部が盛んに使っていたことで、政治色や戦争色をイメージすることもあり、好まれなくなったのでしょう。

 また、西暦も皇紀も紀年法であるのに対して、元号は一定の期間の区切りを表します。そのため、その期間を象徴する出来事などと結びついたイメージを形成しやすくなります。

 例えば、本学はズバリ明治大学です。明治時代に創立されたことを表すとともに、明治時代の変革や自立の気風が建学の精神にあることを感じさせます。これが、「1881年大学」であったら、そのようなイメージは湧かないでしょう。

 「大正ロマン」、「昭和歌謡」、「昭和ひとけた世代」、「平成世代」など、元号と結びついた言葉はたくさんあり、それらの言葉がもつイメージを西暦で表すことは難しいのです。

 つまり、これは、紀年法の西暦にはない元号のもつ「ネーミングの力」であり、これによって多くの人とイメージを共有するように思う、その共有感もまた、私たち日本人は好むのです。

 一方で、元号に無関心とか、押しつけられていると感じる人もいるでしょう。また、「平成世代」などと括られるのは嫌だという人もいるでしょう。天皇制反対、元号も反対という人もいると思います。それはそれでひとつの考え方であり、否定はしません。

 ただ、元号や元号的なもの、つまりは慣習的な部分を、日本人は好み、受け入れてきた面はあるのです。それは、理屈ではなく好みなのです。元号について、天下国家を論じるように目くじらを立てなくても良いのではないでしょうか。

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